セントジェームス や ルミノア を代表に、ファッションアイテムの定番として不動の地位を確立するボートネックの横縞シャツ。通称 バスクシャツ 。
当店でもこの バスクシャツ と呼べるアイテムが、各ブランドから毎年リリースされていますが、今回はそんな バスクシャツ についてご紹介したいと思います。
ちなみに今回、この記事を書くにあたり バスクシャツ について色々と調べていく中で、僕自身も知らなかった、ある意外なことがわかりました。
バスクシャツ のルーツについて
バスクシャツ のルーツは、20世紀初頭、船乗りがワークウェアとして好んで着用し、その後フランス海軍のユニホームとして納品されていたもの、というのは有名な話。
上の写真は、映画「ココ・アヴァン・シャネル」の一場面。オドレイ・トトゥ演じる 主人公 ココ・シャネル が、当時(1920年代頃)の船乗りが着ていたボーダーシャツを見て、普段着として取り入れている様子を描いたこのワンシーンからも、そんなルーツが伺えます。
さらにはこちらの写真。誰しも一度は耳にしたことのある世界的な著名人、 パブロ・ピカソ(左) や ヘミングウェイ(右) ですが、彼らも好んで着用していたことも有名なところで、そういった点からも、今のファッションアイテムの定番としての地位がうなずけますよね。
ですが、この バスクシャツ という呼び名について、冒頭にも述べたように今回意外なことを知ったんですが、
どうやら本場フランスでは「 バスクシャツ と言う名称自体が使われていない」とのことなんです。
これ、少し驚きませんか?
ふたつの呼び名と、ディテール・柄の所以について
そもそもこの バスクシャツ という呼び名、スペイン国境近くの「バスク地方」の漁師の仕事着だったから バスクシャツ という説が一般的。
僕自身それしか知らなかったんですが、フランス北部「ブルターニュ地方」のマリンウェアーを発祥とする考え方で、 ブルトンマリン という名称のアイテムであるという説をもう一つ見つけました。本場フランスではこちらの ブルトンマリン という名称で一般的に呼ばれているみたいです。
ではなぜフランスでは バスクシャツ とは呼ばずに ブルトンマリン と呼ばれているのか?
ここからは完全に推測になりますが、1世紀以上もの歴史を持ち海軍に納品されていた、という経緯から考えれば、フランスとスペインにまたがる「バスク地方」の名称ではなく、完全にフランスの領土である「ブルターニュ地方」つまりは ブルトンマリン という呼び方の方を浸透させたかった、という政治的な意図があったのかもしれません。
さらには、この横に大きく開いた バスクシャツ 特有のネックは、海へ落ちたときにすばやく脱ぎやすいことから生まれたディテール…
また バスクシャツ によく見られるこのカラフルなボーダー柄も、遭難などの場合の視認性を考えてを採用した…
などなど言われていますが、これらもまた定かではなさそうです。
男女問わず好きなコーディネートで自由に着られるのが バスクシャツ 。
今回、 バスクシャツ・ブルトンマリン 、そのどちらが正しい名称なのかを断言できるほどの確実な資料は、正直見つけることが出来ませんでした。
けれど、ここまで世界中で愛されている定番的な洋服であっても、はっきりとしたルーツが不明確、というのもまた面白いですよね。
先日の FRENCH WORK VINTAGE もそうですが、もともとファッションアイテムとして生まれたものではなく、作業着としての歴史を重ねて今日に至る バスクシャツ(ブルトンマリン)。
こういった定番アイテムのルーツを自分なりに調べながら、ゆっくり晩酌したりするのも大人の嗜みなのかもしれません。
最後に、こちらは先日入荷したばかりの PHIGVEL ソリッドバスクシャツ 。
春夏仕様のこちらのカットソーは、インナーでもかさばらず、一枚で着ても主役を張れる抜群の着回しの良さで、個人的にも大変重宝しています。
世界中で定番アイテムとしてここまで広まったのは、生まれた経緯云々抜きにして、男女問わず着やすく、好きなコーディネートで自由に着られる点にあるのかも知れませんね。