S&S / BLOG Oct 2, 2022
Text:OKAZAKI MASAHIRO
10月7日、10月30日にリリースを控えた【Painted Blank】の新作姉妹ニット、その名もKimberly(キンバリー)と Kelly(ケリー) このニットを作り始めて2年。前回に引き続き、製作までの道のりを細かくご紹介します。(第三話)みなさま是非読んでください。
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前回前編後編に渡って書いた記事をメーカーさんに送ったらものすごく喜んでくれた。

「2年間、打ち合わせを重ねてきましたがこれは感動します」
そう言ってくれた。加えて、現地でしかわからないもっと詳しい情報などあったら随時送ってもらうように頼んでいた。そして昨日、一枚の画像とともに詳細についてのメールが届いた。

今回は、前編、後編に加えて、届いたメール(現地の声)をもとに改めて私が作ったニットを紹介する。

10月、11月にリリースを控えたオリジナルブランド『Painted Blank』の新作”Kimberly”&”Kelly”。どちらも冬の必需品であるセーターであり、ブランド初となる海外生産にチャレンジしたアイテムである。

詳細情報

【今回使用している糸の種類】
Crew (薄手)→ Michell Baby Alpaca100% 
タートル (厚手)→ Michell Alpaca 100%  Baby Alpaca 100%の2本取り

標高4000メートルを超える過酷な高山地帯であるアンデス地方では、人々はコミュニティ内でアルパカは家畜として飼育しており1年に1度だけ、大人のアルパカは9〜11月に毛刈りをする。子供のアルパカは厳しい環境下のため、体力がないため、生後1〜2年は毛刈りはされない。

ちなみに、Baby Alpacaは生後3ヶ月以内のアルパカの柔らかい毛だけを櫛ですいて取った、1頭につき、たった1回だけしか採れない貴重な素材で、アルパカの毛の中でもとても貴重なものとなっている。
毛刈りをされた後、品質の良いBaby AlpacaやAlpacaだけをMichell社が買取りそれぞれ自社工場で毛糸に加工されていく。

紡績メーカーは他に小規模な工場や個人で営んでいる工場はあるが、
品質管理上の問題で品質をキープすることが非常に難しいというのが現実。

【提携工場名】

毛糸にしたものを熟練の職人たちによって生地に仕上げられる場所だが、
Espacio Concepto Moda EIRL (ペルー リマ市内ミラフローレンス地区) の工場を使った。

同社は主にアメリカ/ドイツ/韓国/日本/チリ/リトアニア/ロシアからのOEMや小売店からの受注を受けて輸出も手掛ける。また、ペルー政府に認められ日本をはじめととするアジアや欧米各国で開催されるペルー政府主催の展示会ブースにも誘致を受けている。正真正銘のアルパカ製品を使用しており、Michell社の推薦でアルパカ協会の会員メンバーにも加わっている。

【製造工程】

↑写真は実際に使われた(薄手のニット)手横機と呼ばれる昔ながらのニットを編む機械。厚手のもの (タートルネックのもの)は完全に手編みで制作した。

ペルー国内で生産している工場の殆どは大量生産で効率的に生産可能な自動編み機を使用している。目が揃っていて綺麗ではあるが、最初から最後まで人の手によって手編みで仕上げている製品は、風合いや触った感触は自動編み機で仕上げられたものとは格段に違う。さらに着用に伴い体に馴染んでいく感覚を堪能できるはず。

≪手編みで仕上げられた製品の製造工程は完全に職人の分業制で行われる≫
リンキング(縫製)→縫い合わせ(補修作業等)→アイロン→検品→完成

この中でもアイロン作業は非常に難しくもっとも重要な仕事。アルパカの毛は羊や他の毛と比べてかなりクセが強く、同じ縫製、同じ仕様で生産しても1枚1枚必ずサイズが違ってくる。
この時、2〜3cmの誤差が出るが、熟練のアイロン職人がメジャーで図りながらゆっくりと時間をかけて長年の経験と技術でアイロンを充てて修正していく。言い換えれば、腕のいいアイロン職人がいなければ、クセの強いアルパカを手編みで仕上げることができない。

近年ペルー国内では諸外国と同様、大量生産することにより、効率的に利益を生み出すことができる反面、伝統的に受け継がれてきた職人たちの仕事が激減することによって職人の数が急激に低下している。
職人の大半は貧困層に暮らす人々で、彼らは家に帰ってもガス/電気のインフラは整備されておらず、住居は砂山の上で、夜はローソクを照らして暮らしている。

このことは国連が定めたSDGsのひとつであるフェアトレードで目標1(貧困をなくそう)目標2(飢餓をゼロにする)等に結び付き、モノを作る私たちも真剣に考えていくべき問題である。

アンデスの空とアルパカ

アンデスでのニット制作もいよいよ大詰め。

改めて、繋いでくれたメーカーさんをはじめ、現地で関わった全ての人には感謝しかない。「手にする人に全部を伝えたい」と言ったものだから、現地の職人さんたちに慣れない写真まで撮らせてしまった。きっとこれからも追加で写真を送ってくれるだろう。

さらに、生地制作に関しても何度も何度もやり直してもらい迷惑をかけたが、お互いが全力でぶつかるからこそ良い物ができたと信じている。そんなバックストーリーを細かく公表することで、私が作る洋服には “物語” というスパイスが加わる。

素材、縫製工場、使われる機械、編み方や現地の声まで全てクリアにした洋服が世の中にどれだけあるだろう…この泥臭い物語をまとったニット。洋服に興味があるとかないとか関係なく体験して欲しい。

「かっこつけないかっこよさ」を肌で感じてもらえるはずである。

『Painted Blank “Kimberly”&”Kelly”』

先日連絡があり、そろそろ南米ペルーから徳島へ発送される準備が整いつつある。リリース直前の最終報告として現地から送られてきた写真を中心にご紹介する。

〜 素材提供:Michell(ミッチェル) 〜

ペルーにあるMichell(ミッチェル)という会社の毛糸を使わせてもらえることがニット制作を進めるうえで全ての始まりだった。
画像はホームページから抜粋した(※使用許可はいただいています)

↓ここからは、ニットを作ってくれた、Espacioの担当者がMichell社で撮ったもの。

〜 現地の職人さんたち〜

〜 繋がる未来 〜

「岡崎商店」でありたい。

酔っ払うと高確率で仲間たちにいっている(らしい)言葉だが、お洒落を楽しむことは、単純に見た目を整えることではない。
どこで作られ、誰が作り、どこで買うか。
そのことを頭に入れながら、洋服を通して自分と向き合い、未来の自分を育てる行為ではないだろうか。

私のお店は決して大きくもなく、田舎でひっそり営む個人商店だが、小さいからこそできることを毎日考え、大きくなれば薄れてしまう大切なことを伝え続けたい。歩む速度はカメでいい。でも着実に前に進める強いカメでありたい。このニットが紡いだ物語は店に新たな風をもたらしてくれるはず。

私のニットを手にした全ての人、この物語を読んだ人に伝えたいことがある。
どんな場所にいても、世界と繋がり未来を勝ち取ることはできる。想いは届く。夢は諦めない限りいつか必ず叶う。四国の小さな洋服屋が遠い遠いペルーの人たち繋がり、こうやってモノを生み出せるのだから。

時間や場所を超えて人に力を与えることができる洋服を私はこれからも紹介し作り続けたい。
繋がる未来を信じて。

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この記事を書いたひと
岡崎 昌弘OKAZAKI MASAHIRO | at_slowandsteady
1981年生まれ SLOW&STEADY 代表。18歳の時より地元の古着屋へ勤務。その後同じく県内のセレクトショップ勤務を経て2013年「SLOW&STEADY」をオープンさせる。ブログとは別で文章形SNS『NOTE』にて洋服にまつわる記事を毎日更新しています。 『NOTE』 https://note.com/slwanstdy
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