
こんにちは、スタッフ上埜です。
突然ですが、昨年末から私の中で空前のフルレングスパンツブームがきております。Painted BlankのPatrickを代表とするクロップド丈(九分丈)のパンツはもちろん大好きですし、今でも変わらず着用しておりますが、以前に比べ、フルレングスのパンツに手が伸びることが増えたような気がします。これがいわゆるマイブームの変化ってやつなのでしょうか…。
そんなささやかなブームの変化の中で僕の目に思わず飛び込んできたのはあの名作パンツでした。それが今回ご紹介するこちらのアイテムです。
【VINTAGE SELECT】50S FRENCH NAVY LINEN SAILOR PANTS



ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、2年前、当店に入荷したフランス海軍のセーラーパンツです。2年前時点でもかなり希少性の高いアイテムでしたが、今現在は2年前よりもさらに個体数が少なくなっており、市場での流通数も減少しているアイテムです。当店でも2年前の入荷時に一定数ストックしておりましたが、それも残り僅かとなってきている現状です。
素材やシルエットに関しては過去のブログで触れていますのでそちらをご参照ください。
【VINTAGE】秋の香りとともに…。フレンチビンテージアイテムのご紹介 | SLOW&STEADY


今回は、過去のブログでは触れていなかったこのパンツの特徴的なディテールに注目したいと思います。
それが、フロント部分の大きな開口部。写真を見ていただければ一目瞭然ですが、これは元々フランス海軍の兵士たちが、通常のパンツの上から着用する“オーバーパンツ”として設計されていたための仕様。着脱のしやすさや、用を足しやすくするための合理的なデザインです。現代においてはパンツの上から重ねて履くことはまずありませんので、その構造ゆえに着脱に少し手間がかかるのは事実。しかし、その“面倒くささ”こそが、今の私には心地よく感じられるのです。
変化が教えてくれたこと



なぜ今、このパンツなのか。それにはマイブームの変化だけでは説明しきれない何かがあると思います。
年々暑くなる夏、クラシカルな装いを提案している当店でさえ、快適さや機能性を重視したアイテムが増えてきています。ファッション業界全体で言えばその流れは加速度的です。ただ、そんな時代の流れの中で私はあえて少し面倒なものに惹かれたんです。
思いかえせば、当店を知って洋服に興味を持ち始めた頃、私は分厚いコーデュロイのパンツを真夏でも平気で履いていました。今考えると「すぐに脱げ!」と言いたくなるような選択ですが、当時の私はその”暑さ”や”不便さ”を気にも留めていませんでした。ただ手間だろうと、暑かろうと好きな洋服を着たい、その一心でした。
ところが、洋服を好きになり、働き始め、大好きな洋服に囲まれて過ごす日々に慣れる中で、心のどこかでこれでいいやと無意識的に楽をしようとしていた自分がいます。それはそれで悪いことではないでしょうが、その心は果たしてカッコいいのか?そんな疑問をこのパンツが投げかけてくれたように思います。楽な物ばかりに慣れるな、気合を入れてお店の扉をくぐっていたあの頃を思い出せ、と言わんばかりに。
だからこそ、今私は無性にこいつが履きたくてたまらないんです。履く時のちょっとした手間ですら愛おしく感じる、むしろそれが私に気合を注入してくれて、気持ちを引き締めてくれるような気がします。
手間暇をかけた分だけその洋服に愛着が湧いてくる、そんなことは洋服好きの方なら誰しも経験があるはずです。まさに手間をかけた分だけ愛着が湧くこのパンツをあなたもこの夏の主役にしてみてはいかがでしょう?
皆さまのご来店を心よりお待ちしております。