今井 当時日本にいながらでも手に入る情報(本)は見ていましたから。好きですからね。その本の中で自分好みのジュエリーを探し、どうせ行くならその創り手に会いに行こうと。ですがアメリカに全く知り合いもいないのでとりあえず現地まで行って、現地の人に尋ねるしか無いと思っていました。それしかアーティストにたどり着く方法が無いと、尋ねた誰かしらは知っているだろうと。 「あそこにいると思う」 「ここに居るだろう」 といった現地の人の情報だけを頼りにしようと。
岡崎 それで、実際現地に行って創り手さんには会えたんですか?
奥様 ジュエリーアーティストの中には住居を転々とする人も数多くいて。現地で知り得た情報を頼りに行っても、もう住んでいないっていうのもあったり..。アーティストの今の年齢は本で知っていても、どういう顔をしてどういう風貌で、とかまでは分からないですからね。本に載っている創り手の写真もかなり昔のものを使っていたりしますし。
今井 ただ、会いたかった人にはほぼ会えました。全員じゃないんですけど。現地の生の情報を頼りに、それこそ数百キロ、数千キロと奔走しましたから(笑)
岡崎 そのエピソードの延長で、僕も聞いて驚いたリーヤジー(Lee A.Yazzie…ナバホ族の巨匠アーティスト。現存のアーティストの中でトップクラスだと言われている人物)に会えたってエピソードがあるんですよね?
今井 そう。 「このマチのあそこらへんにリーヤジーが住んでいる」 という情報を元に、その町の人達に聞きまわったのですがなかなか本人の居場所が分からない。いつもの如くある日、一人の女性に 「リーヤジーの居場所は知らないか?」 と尋ねると 「私その人知ってるよ案内してあげる」 と言ってくれて。その女性の車の後ろに付いて行って、ある家に着いたところ
、その女性は家の中へ。しばらくしてその家から出てきた男性こそリーヤジーでした。そして私を案内をしてくれた女性、実はリーヤジーの娘さんだったんです。
岡崎 …ほんと何度聞いても奇跡ですよね。でもちゃんと案内してくれたってことは娘さんも話す中で今井さんから何かしらの情熱を感じ取ったからじゃないんですか?
今井 うーん。どうだろう。日本から会いに来る人っていうのは彼ら(ネイティブアメリカン)からしてもそれまでほとんど皆無のようでして。まさか日本から??って。彼らからしても日本=ジャパンは当時、アメリカに次ぐ 「経済世界第2位の国」 「サムライの国」 「忍者の国」 かたや今や 「ハイテクの国」 といった印象で知らない人は居ないわけですよ。彼らの方も長い歴史と伝統文化を持つ国 日本、そして日本人に興味があったのだと思います。そんなことも踏まえてわざわざ海越えて遠路はるばる来てるんだからじゃあとりあえず会ってみようかってなってくれたんじゃないですかね。日本人はどんな人間なんだ、どういう人達なんだって。お互い興味がある的な(笑)
岡崎 それがいつぐらいの話ですか?
今井 それが1998年頃だったと思います。
岡崎 それ以降、現在の生活(一年の1/3をアメリカで過ごす)を続けながらアーティストと信頼関係を構築していってるんですね。
今井 それこそ今ではお付き合いの無くなってしまったアーティストもいますが、未だにお付き合いの続いているアーティストは沢山います。
岡崎 僕の周りの話を聞いていると専門店でも現地に行かずにアメリカの業者から買っているっていうお店も少なからずあるじゃないですか。今井さんがまずアメリカに行くっていうのは、本物であり、自分の目できちんとしたものをお客様たちに提供したいっていう気持からですか?
今井 そうですね。だって店を始める時にはこの世界のことが好きでしたから。ですから純粋に好きだからこそ、そこに興味があるんです。どんな場所に住んでいて、どんな所で創作活動していてどういう人が作品を生み出していて、どういう人間なのか、どういう考えを持った人なのか、そういうのは自然な流れですよ。基本的に作品だけじゃなくて作品の背景が知りたくて仕方がなかったんです。