SLOW&STEADY > INTERVIEWS > Raymond 高橋尚志
SPECIAL CONTENTS "&"
2018-12-26 Update

SLOW&STEADY 5周年イヤーとなった2018年、内外と様々なイベント、コンテンツをお届けしてまいりましたが、その最後を飾る今回は、徳島で洋服を扱うひと、洋服を愛するひとならばその名前を聞いたことがない方はきっといない、
老舗セレクトショップ『Raymond』代表 高橋尚志さんに、満を辞してお越しいただきました。30年に渡って徳島の洋服業界を牽引され、もちろん僕にとっても大先輩にあたる高橋さんに、様々な想いを語っていただきました。

ネットはすごく便利なものだけど、お店だってなくなることはないと思ってる

岡崎 これまで店頭に立ち続けてきて、高橋さんの中でお客さんへのアプローチや接客の仕方で大切にしていることってありますか。

高橋 まあ接客というか。お客さんとの間で思うことは、その人に合ったやりとりをするのが大事なのかなとは思う。ただ単に売るんじゃなくてね、やっぱりお客さんに喜んでもらわないとダメであって、この商売。ヘラヘラというか馴れ合いになってしまう接客じゃなくて、まずはお客さんを格好良くしてあげる、可愛くしてあげる、気持ちよくしてあげる。もうコレしかないと思ってて。単に物を売るってだけのことをしていたらお客さんも来てくれなくなるんじゃないかな。やっぱりその人に似合う服を勧めてあげて、満足してくれたら必ずもう1回来てくれる。まあ、それが分かるまでにずいぶんと時間がかかったけど(笑)今日、カメラマンをしてくれている とっさん なんかにも「若かりし頃のレイモンドは怖かった」ってよく言われるの(笑)まあそれもこれも良かったのかなぁって。あんまり媚びてヘラヘラやってたら早くに僕の店は無くなってたかもしれない。

岡崎 僕もそう思います。レイモンドしかり、当時の洋服屋さんに入る手前で高校生の僕はいつも「ヨシ」って気合い入れて行ってたんですよね(笑)でもそれって僕たちからしたらすごくいい緊張感というか、やっぱ格好いいわーみたいな(笑)そういう風にひとつハードルを作ってくれた方がテンション上がるところもあったんです。それを今もなお、保っていてくれてる。それって僕からしても嬉しくて。

高橋 まあ色んな意見があるんだけど。僕が今まで続けてこれたのは、この店を大事に思ってくれているお客さんのおかげっていうか。いろいろ言われるよ。いいことも悪いことも。でもそんな中にも、ここなくなったら俺ら服買うとこなくなってしまうとか、そんな言葉を聞いたらね、心折れそうになってても頑張ろうってなる。そういう言葉を大事にしたいなと。お客さんありきのことだから。この商売っていうのは。

岡崎 ただ単に物を売るだけじゃないってことですよね。

高橋 うん、本当に。売るだけじゃなく、お客さんに喜びをちょっとでも分かってもらえるように売ってきたつもり。

岡崎 今やネットも普及して自宅で簡単に買えてしまう時代で、良くも悪くも、業界的に大きく販売方法も変わってきたと思うんです。高橋さんの中で何か変化してきたことってありますか?

高橋 僕らの時代はネットっていうものはもちろんなかった時代じゃないですか。今は情報も早いし多いし何でも簡単に手に入ってしまうけど、やっぱりお店は、実店舗っていうのはそこに入って初めてそこにしかない雰囲気ごと、いろんなものを感じられる場所だと思う。利便性だけを優先するなら、やっぱりネットの方が欲しいものをチャチャッと探したらポンで買えるのかもしれない。でも、僕はそういう「買ってハイ終わり」みたいなのは、ただの物々交換みたいにどうしても思えてしまって…。欲しいものを手に入れて、すぐおしまいとかはどうも馴染めなくてね。やっぱり自分の手でちゃんと触って素材確認して、いいなと思って着てみて。で、鏡見たらものすごいテンション上がるじゃない。わからないことは店員さんに聞いたりしながらね。ネットっていうのはすごく便利なものだし、なくなることはないと思うけど、お店だって同じようになくなることはないと思ってる。
まあ、インターネットが出始めたころはメーカーもオンラインショップとかを作ってたから、正直苦しい時期もあったりはしたんだけど。実店舗は実店舗としての役割をきっちりやっていけばいいんじゃないかなと思って。来てくれたお客さんに商品をわかってもらってテンションが上がる接客とかを。お店にしかない良さっていうのは絶対あるし。
例えばインスタグラムにしても、あ、コレが入ったから見に行こうってなって、実際このTシャツ見に来たけどこんなのもあるんですか。みたいな。Tシャツ買いに来たけど違うものを選んだりね。1点、2点、3点と。それこそお店ならではだと思う。

岡崎 やっぱりそこには高橋さんしかり、お店の人とのコミュニケーションありきってことですよね。

高橋 うん、それはそうだと思います。お店でしか味わえないことだから。

岡崎 今ってお店の流れも早いじゃないですか。徳島県内でも、ものすごい勢いで出来てはつぶれっていうのを近いところで見てきたと思うんですけど。そういった中で、高橋さんが思う『長く続く良いお店』ってどんな店だと思いますか?

高橋 良いお店ねぇ… やっぱり、流れでその時売れる物だけを置いてるお店じゃなく、自分の好きな人達が作ってる好きなブランドを教えてくれるお店。知らないことも教えてくれるし。売れるもんだったらどこでも買えるもんね。そのお店にしかないもの、みんなが知らないような物を教えてくれたら良いなと思う。

岡崎 プラスアルファでってことですよね。商品全部にちゃんと気持ちが入ったお店っていうか。

高橋 ひと言に良いお店っていうのは難しいけれど、例えば10人お客さんが入ってきたら、10人全員には分かってもらえなくても、その中の1人か2人は格好いいなって思ってもらえるような。9人は見るだけ見て帰る。でも1人は絶対に残る。そういうお店がいい店だなって信じて僕もやってきたかな。

岡崎 そこはお客さんに媚びてないってことに繋がりますよね…お客さんに合わせて売れる物しか入れないとかじゃなくて。

高橋 やっぱり魅せて引っ張っていくっていうのも必要だし。10人が満足してしまうようなお店ってなんというか…そういうのが良いお店かって言われたら僕は違うと思う。全員が満足するような店を目指してるんじゃなく、人がやってないようなことをやってくれるお店。僕にとったらそれが、ネペンテスとかHRMだったんよね。僕もそういうのを教えてあげたいなぁと思って、今もずっと。やっぱお店って色々な人が集まってくるでしょ。そこで普段なら絶対出会わないような人でもお店で出会うことができる。その中で色んな話が聞けたりね。そんなのが良いお店なんだろうなと思う。これも全員が分かってくれるかどうかはわからないんだけどね(笑)

岡崎 いや、僕も本当にそう思います。そういう店を目指したいなと思って…

高橋 そう言ってくれるのは嬉しいな。

岡崎 やっぱ高橋さんのチョイスで、高橋さんだからっていうのが今のレイモンドで、30年ずっと変わらず続いている理由だと思います。僕も受け継いでいかなきゃというか、見習っていかなければなと思います。

高橋 (笑) いやぁ、僕からしたら岡崎君の方がすごいなって思うけど。僕たちの頃は服屋も少なかったし、情報だってお店にいかなきゃ教えてもらえないことっていっぱいあったのよ。店の方が強かったというか。今はもう、そんな時代じゃないでしょ。若い人の人口だってどんどん減少してるし。

岡崎 パワーバランスで言えば、僕からすると昔の洋服屋さんって店員さんはもちろん、毎日いる常連さんとかみんな怖かったです(笑)お客さんも怖いし、お店の人も怖いしっていうのが学生時代のイメージです(笑)そんなのも含めていい時代というか。格好いいお店には憧れがあって、だんだん仲良くなっていく楽しさもあったりして。確かに今はそういう時代とはちょっと違ってきてると思いますよね。でも僕個人としては高橋さんにはこれからも変わらずそのままのスタイルでやっていってくれたら嬉しいなと思うんですよね。

高橋 これしかできないもんね。いまさら変わらないよね。っていうかもうこれしかないんだよ。格好悪いことはしたくないから。

1 2 3
SLOW&STEADYONLINE STORE
STORE NOW
PEOPLE
PAGE TOP