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2016-03-18 Update

「釣りをやる人の目線」じゃない意見とかを拾い上げていくことが、これからの僕らの業界にとって重要

岡崎 ところで『スローテーパー』『スローアンドステディ』っていう名前の由来ってあるんですか?

 『スローテーパー』って竿の調子のことです。ロッドメーカーだからっていうのもあるんだけど、テーパーって先細りでとんがってるって意味で、だからゆっくりと自分が目指す頂点に向かって行ければなと、いつかそこに辿りつければなというところで竿の調子のスローテーパーとゆっくり頂点に向かう「スロー」と「テーパー」っていうのをかけて『スローテーパー』にしたんです。で、自分の新しい竿の第一弾のスローアンドステディシリーズは、そこの部分をゆっくり着実にいければいいなと思って『スローアンドステディ』にしました。これは余談ですが、カーボンシリーズの『ディスティル』っていうのはそこから派生して、いわゆるグラス、自分はトップウォーターに一番何かひとつ素材をとれって言われたら、カーボンじゃなくグラスなんです。だけどカーボンてのもやっぱり魅力的な素材だし、なくてはならないと思ってたから、グラス素材の竿を先にある程度、定番的にしっかりと取り組んでからカーボンに取りかかろうと思ってて。で、満を持してカーボンやった時に蒸留ですよね、醸造酒じゃなくて蒸留酒。よりもっと蒸留することによってアルコール度数が上がって濃くなってっていう、そこで『ディスティル』っていう蒸留って言葉を使ったんですよね。

岡崎 これはなかなか聞けないお話ですね。しかも、それも本当にたまたまなんですけど、僕の店の名前と同じで(笑)

 そうなんですよ!本当にビックリしました。逆に岡崎さんは店名の由来ってあるんですか?

岡崎 僕も林さんとよく似た部分で。中学生の時に洋服が好きになってから、18歳で本格的にアパレルで仕事を始めて、20歳そこそこで、自分のお店を持つ夢を抱いてから実際にこの店をオープンさせるまで、本当に沢山の人に助けられながらゆっくりここまで来たっていう自分の今までのこと、それと店も僕もお客さんたちも「ゆっくりでも着実に前へ進めるように」って意味合いでこの名前にしました。林さんは今の店鋪を作ろうと思ったきっかけってありますか?

 そうですね、オリジナルの竿を作るようになって、その竿をお客さん達が直接手に取って、見て、自分で説明ができるショールーム的なものを作りたくなって。ただ、上手い具合に小規模のハコがなくて、立地条件もそこそこの規模の広いハコしかなかったんですよね。で、当然のことながらもともとショップというよりショールームっていうのがスタートだったので、家賃が高いって所は断念して。で、結局今のところに決めました。それで、スペースがあるんだったらというところで、色んな物をセレクトして今に至る感じですね。竿でいったら自分で作ったからこそ自分で伝えたいですし、その他の取り扱う物も同様に。

岡崎 林さんはもう11年も店をやられてるんで、大先輩を前にとても偉そうなことは言えないんですけど、僕もやっぱり人の手がしっかり入ってるもの、流行とか、売れる売れないとか関係なく、自分が着て、見て、テンションの上がるものを売りたいって言うのはあります。洋服においては、そういうもの、例えばいわゆる生地とか糸から作られたものって、どうしても値段が高かったりするんですけど、そこらへんの見えない「気持ち」ってお客さんも必ず感じるものだと思ってて。そういう意味でも、最終的には自分が「責任を持てるかどうか」っていう基準でセレクトしています。

 最終的には岡崎さんも僕も趣味が高じてだと思うので、店をたたむ時に一生死ぬまでこいつら使ってやろうって商品を入れるべきだと思うし、そこだと思うんですよね。で、値段の高い安いってのはあると思いますけど、今のご時世考えるとやっぱり高いには高いなりの理由があるし、安いには安いなりの理由があると思うんですよ。で、やっぱりそこの部分をどうやってお客様に理解していただくかだと思うんですよね。僕らはそれが伝えきれないんだったら僕らがそのファンになって残ったやつ全部買い取って「じゃあこれ一生着たるわ」みたいな感じでやる。そうじゃなかったら店やる資格ないと思うんですよね。

岡崎 確かにそうですね。そういう意味でもそのマインドをしっかり持ってるから、林さんの竿に魅かれたのかもしれないです。

 ありがとうございます(笑)まあそのスタンスじゃないとあれですよね、洋服なんかも結構値段しますから仕入れられないし、自信もってお客さんに売れないですよね。

岡崎 昔、ある先輩に「どんなに洋服に興味がないお客さんだとしても、店に来てくれた人を舐めるなよ」って言われたことがあって。その言葉が今でもすごく残ってて。自分なりに伝えることが嫌になったら洋服屋は辞めよう、って覚悟はしているつもりです。ただ、でも僕、洋服屋じゃないですか、林さんの『スローテーパー』を取り扱いさせていただきたい、って電話したのって本当に8割5分駄目もとだったんですよ。

 えっそうなんですか(笑)たしかに(釣具屋以外に卸したことは)ないですね。SLOW&STEADYが初めてですね。

岡崎 林さん自身、卸し先の基準みたいなものって設けてるんですか?

 いや、ないです。基本的には。ないっていったらまあ…細かいこと言えばあるっちゃあるんでしょうけど、基本的にはやっぱり、釣りを広めてくれるような販売だったり、ちゃんと釣りを好きな方がやられていたり。あとはやっぱり、竿って釣具の中で高額商品ですから、手に取って触ってお客さんに説明していただける環境をつくっていただけてるってのが、生意気な言い方だけれども条件、ということでやらせていただいています。

岡崎 特に竿は、実際触ってみないと分かりませんもんね。ウチとしても釣り竿も握ったことが無いようなお客さんが「なんか楽しそう」とか「気晴らしにやりたい」っていうので地道に広がっていくのを側でみてると、やって良かったなぁって思います。洋服以外の部分で友人関係が広がったり、お客さんと趣味を共有出来るっていうのは凄く嬉しいし有り難いです。

 自分なんかはカッコつけた言い方すると、ライフスタイルというか。やっぱり洋服が好きな人がほかとは違う、こういった変わったものにハマってっていうのは嬉しいと思うし、釣具業界にいるとどうしても「釣りをやる人の目線」っていうのになりがちなんです。
逆に言うと、今回岡崎さんの所は釣具屋ではない洋服屋さんなんで全く違った視点のお客さんが来られるってのがあるわけで、そういったところをある程度拾い上げるというか、意見とか拾い上げていくってことがこれから僕らの業界にとっても重要だと思ってます。
底辺を広げていく、多くの人にこの釣りを知ってもらおうとした時に、釣具屋さんだけでは厳しいと思うんですよね。…まあ業界って言っても、本当に狭い業界なので。
例えばこのテーブルぐらいの大きさが「バスフィッシング」っていう分野だとすれば、そのDVDのパッケージぐらいの大きさしかない分野だと思うんですよ。…業界って言っていいのか分からないんですけど、いわゆるハンドメイドのトップウォーターの分野だけで考えていたら、現状そんなに良くはないですからね。

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