岡崎 あと、個人的にはやっぱり男なんで「かっこよく釣りをしたい」っていうのもあったりして、単純にもののデザインとか。で、結局そういうのでワームとか、トーナメント系の釣りからこっちに来たんですけど。林さんが作るものって、単純にカッコいいじゃないですか。
林 (笑)自分はそう思ってやってはいるんですけど、まあそう思っていただけると本当にありがたいです。
岡崎 林さんも以前お電話でおっしゃられてましたけど、カッコいい物を作るって簡単ではないじゃないですか。聞いて驚きましたけど、リスクも高いし。
林 そうですね、好きにならないとリスクは負えないし、リスクを負わないと好きなものを作れない、ってのが正直なところなんでしょうけど。
岡崎 林さんの中でオリジナルのトップロッドでありグリップであり作る基準っていうのは、先程のお話とリンクしますが、自分が100%好きになれるかどうかですか?
林 そうですね。好きになれるかってことと、本田選手がミラン入団会見をした時のリトル本田の話じゃないですけど、もうひとりの自分が客観的に見てオッケーか?みたいな。どうしても作ってると「いいんじゃないか いいんじゃないか」ってこうイケイケな感じになっちゃうわけですよ。例えばの話、竿なんかでも5投ぐらいして違うなってボツにして、新しいブランク発注するなんてのがざらにあるんです。でもそこを冷静に判断して行かないと逆にこれちょっとおかしいな、最初とイメージしたのと違うなって思っていても、それで釣りをしていて「50アップ釣れちゃいました」ってなったらいいじゃんこの竿!ってなっちゃうもんなんですよ。
岡崎 分かりますそれ。
林 でもそれって最初の目的からズレちゃうんですよ。
岡崎 そうですね。
林 最初の段階でそこは…
岡崎 客観的に物だけを判断するってことですね。
林 はい。自分なんかはFacebookなんかでも書いてるんですけど、竿って素のブランクっていうか塗装もラッピングもテストブランクみたいな感じで進めて行くのが当たり前なんですけど、そうすると塗装とかラッピングを完成品と同じ仕様にした時に、フィーリングがちょっと違ってくるんですよ。なので1本のサンプルでもウチは完成品と同じ仕上げでやってるんです。そうするとやっぱり変な話、5投でボツになると…
岡崎 当然そのボツになる1本にも余計に経費がかかってるわけですもんね。
林 そう(笑)かといってやっぱりそこ、定価にのせられないじゃないですか(笑)そんなこと言ったらテストに行く釣行費とかガソリン代とか、もっともっと目に見えないものがかかってるわけですよ。だけどそれを商品代金でまかなうのは絶対違うと思ってるから、自分の中でラッピングにしてもスレッドにしてもブランクにしても、完成品に対してこれぐらいは頂いてもいいんじゃないかっていう感覚で値段設定をさせていただいてます。
おそらくある程度竿巻いてる人に普通のラッピングの竿と、このSLOW&STEADYを2本見せて比べてもらえれば「凄いこだわってるね」って言われる自負はあるので。トップウォーターの竿ってのは35,000円ぐらいから、高いとこで50,000円ぐらいまで色々とあると思うんですよ。さっき言ったように高い物には高いなりの理由があるし。うちはその理由を明確にしてるメーカーだとは思うんですよ。それでも理解出来ないって方に対しては単純に僕の説明不足なんだと思うし、今後の課題なんだと思うんですけど。
岡崎 そういう意味で言えば、しっかりと真面目に作られてるものってどんな物でも気持ちが入ってると思います。そういう意味で僕は釣具も洋服もお客さんに勧めるのであれば同じテンションで勧めたかったんですよ。『Anydope(エニードープ)』の中野くんの物もやらせてもらってるんですけど。ウチで仕入れてる物はすべからく同じ熱量で接客したいし、やるからにはある程度は店に並べておくのは当たり前だと思っています。そうしないと結局売れないし伝わらないって思うんですね。
▲ Slowtaper -MUNEAKI HAYASHI- FISHING SCHOOL
林 それに…「目につく」ってだけでもありがたいし貴重だとは思うんですよね。釣具屋に行く人っていうのは釣りに興味がある人しか行かないじゃないですか。でも洋服屋さんてのは釣りを全く知らない人でも行くわけで、そこで「目につく」っていう。目につかないことには興味を持っていただけることすらないわけじゃないですか。釣りを全く知らない人に目にしていただけるというだけでもありがたいなと思いますね。
岡崎 こちらこそです。洋服屋でキャスティングスクールやるなんて今までなかっただろうし、さっきの話と被りますが、お客さんへのサービスがアウトドアを通して出来るって凄く健全だと思っていて。今回以降も続けて欲しいって思ってます。
林 そうですね。どうしてもキャスティングスクールをやるってなった時に徳島と千葉ですから常にお客様の上達し具合をちくいちやることはできないので、参加されたお客様がどれぐらい上達してるのか自分の目で確かめてみたいなって思いますしね。
岡崎 明日来る子なんかは、本当に釣竿を買ったすぐで実際釣りに行ったことがない人もいて、その上、初めて買った竿が林さんの竿だったりするんで、買ったお客さんからしても実際に作った人と会えて、しかも教えてもらえるって、本当にすごい嬉しいことだと思うので。みんな凄く楽しみにしてると思います。
林 まあ、逆に言うと全く釣りをしなかった人が最初にウチの竿を選んでくださった訳ですから、そういう人に会えるこちらもありがたいというか、新鮮というか。
岡崎 明日はタックルの組み方とか、そういうのも教えてほしいです。
林 そうですね、それだけでも全然違いますもんね。僕は店長みたいに洋服は詳しくないんですけど、洋服でも、ベルトと靴合わせましょうよとか、トーンとか素材感を合わせましょうよとかって色々言うことあるじゃないですか?例えばそれを知ってる知らないで全然違うと思うんですよね。釣具もそうで、糸はどれぐらい巻いたらいいですとか、この竿にはこれぐらいのウエイトのルアーですとか、やっぱあるんですよね。そこを知っとくだけでも全然違うので。最初に始めた人ほど見た目とか感覚っていうのでやりがちなんですけど、そこの基礎の部分が一番大事なので、せっかくやるならしっかりと基礎を覚えてからそっちのほうに行った方がより豊かになれる、というのが僕の持論なんです。だから最初の段階はある程度自由に…ってお店もあると思うんですけど、僕は最初の段階だからこそ「これは絶対このほうがいいですよ」とかを言うようにしてます。それがプロショップというものだと思うし。