S&S / BLOG Nov 19, 2017
Text:OKAZAKI MASAHIRO
来たる11月26・27日、SLOW&STEADYにて、BONCOURA デザイナー森島氏が ヨーロッパをはじめとする世界各地で集めた希少なデットストック生地を使った自分だけのジャケットをカスタムオーダー出来る2日間「One-Off」が開催されます。
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SLOW&STEADYとしても初となるこのイベント、事の発端は今年開催した「ボンクラ祭」や、この12月に2度目の開催も決定している高知出店イベント「SLOW&STEADY KOCHI」にて森島さんと談笑していた時でした。

SLOW&STEADY × BONCOURA Presents「ONE-OFF」
詳細はこちら – http://slow-and-steady.com/news/slowsteady-x-boncoura-presents-one-off

SLOW&STEADY × BONCOURA Presents「ONE-OFF」開催のきっかけ

個人的に、ジャケットなんかのイージーオーダーなどに昔から興味がある僕は、森島さんにも随分前から何の気なしにきっとそんな話をしていただろうと思うのですが、そんなことを知ってか知らずか、森島さん自身から「間違いない最高のデットストック生地がいくつかあるから、岡ちゃんところでオーダー会やってみんか?」と、突然今回のイベントをご提案いただいたのが始まり。

もちろん即座に快諾。さらに調子に乗った僕は来年、2018年の冬頃にと密かに考えていた別注アイテムもこのタイミングでどうせなら同時に発表出来ないか、というワガママをぶつけてみたところ、それにも応じてくださり、今までにないボリュームのイベントの実現が決定しました。(別注アイテムに関しては急なお願いだったためいつものように事前のご紹介には間に合いませんでしたが、その分イベント当日の現物をぜひお楽しみに!!!)

森島さんからは以前より「ヨーロッパで生地を作っている」という話は聞いていました。ただ正直、それは生地から徹底的にこだわる BONCOURA なら当然の流れだろう、と思っていた程度。というのもそんな旅の中で森島さんが上質なデッドストックを持って帰ってきていることまで頭が回っておらず、今回のお話をいただいてデッドストックの詳細を伺った時には思わず胸が高鳴りました。

今回のイベントにて披露される生地の種類はもちろん、その詳細の全てを僕自身も細かく知りません。
きっと想像以上に素晴らしいであろうお披露目の瞬間を、皆様と共にとても楽しみにしています。

イベントタイトル「ONE-OFF」について。

また今回、自分だけの一着をオーダー出来る、ということのほかに、もう一つ、大切な意味を持たせました。
それは、デッドストック生地が作られたその背景や歴史、さらにはそれを発見したときの森島さんの喜びや感動まで、そんな目には見えない生地にまつわるその全てを、今回新しく生み出される一着に丸ごと込めたい、という想いです。

今回2日間かけてオーダーされたジャケットは、来年の8月には手元に到着する予定です。
その仕上がったジャケットを手にした人が、そんな歴史や想いまでを背負うことのできる数少ない存在になれる、僕の中ではそんな意味合いも込めて「ONE-OFF」というタイトルにしました。

当時の僕には退屈で大嫌いだった、とある小さな洋服店の記憶。

余談ですが、今回のイベントを開催するにあたり、
幼少期の祖父との思い出がフラッシュバックしてきました。

それは、祖父が幼い僕を頻繁に連れて行った場所。
当時の僕には退屈で大嫌いだった、とある小さな洋服店の記憶。

そこは、当時の祖父よりもずっと年上のおじさんが営んでいた小さな洋服店でした。
今から思えば、退屈していることなど見透かされていたのでしょう、帰り道に必ず買ってくれるビックリマンチョコに毎回釣られる孫を連れて(笑)そこで祖父はシーズンごとに、ジャケットを仕立ててもらっていました。

90歳を越えた現在でも洋服が好きな祖父は、近所の病院に行くだけでも「この時期にこのジャケットは暑いと思うか?」「このジャケットとそっちのと、どっちがええか選んでくれ」などと訊いてきます。
昔、僕がボロボロのジーンズを履いていた時も、「履く場所は選べ」と言うだけで、家族で一人、祖父だけは「履くな」とは一回も言いませんでした。

そんな祖父に、今までずっと疑問だったけど何となく聞いてこなかったことを、今回改めて訊いてみることに。「お気に入りの洋服は他にもあったはずなのに、どうしてじいちゃんは毎年ジャケットを作っていたのか…」
返ってきた回答は、思わず考えさせられるものでした。

「正月に餅をつくだろ? それと同じじゃ。縁起もんじゃな」

戦争も経験し、若い時から苦労していた祖父が、毎年農業の暇になる時期を見計らって孫を連れてジャケットをオーダーする。
それが、祖父にとっての、自分を奮い立たせるひとつの大切な行事だったんじゃないか。そんな風に、祖父の言った言葉を解釈してみました。
当時、洋服屋に行くことをあんなに嫌がっていた自分が、まさか今こうして洋服屋になっているのも、そう思って見れば何か縁のようなものを感じます。

思い出を掘り起こすうちに、当時祖父の作ったジャケットを今の自分の目でどうしても見てみたくなり「多少古くてもどうにか直して着れるんじゃないか、この際 着れなくてもこのイベントを期に店に飾ってやろうか…」と画策するも、残念ながら自身の弟たちに何十年も前に全てあげてしまったらしく、もう一度眺めることも、写真に収めることすらも叶いませんでした。

そういえば、ほかにも祖父からは「安物買いの銭失いにはなるなよ」と教えられたりしました。「しょうもない物を買うな」とも。けれど、馬鹿な僕はこれまで無駄な物をたくさん買い、年を重ねて数多くの失敗も経験し、ようやくここ数年30歳を迎えた辺りから、祖父の言葉が少し理解出来るようになってきたように思います。


いまの自分に合わせて物を選ぶのではなく、少し先の自分を想像する。
数年後の自分が喜んでいそうな物を自分の側に置くような感覚を持つ。

店のラインナップを考えるときもそうですが、
それが祖父の口癖から学んだ、僕の大切な物選びの基準の一つです。

最後に

皆さんもぜひ、数年、数十年先の自分をしっかりと想像してみて下さい。
そこにもし、素敵なツイードジャケットを羽織っている自分がいたなら、この機会に是非足をお運びください。

納品までの数ヶ月を、心待ちにしながら過ごす毎日もきっと悪くないはず。
祖父のジャケットじゃないですが、きっと自分の子供、いやお孫さんの代まで受け継いでもらえるような素晴らしい一着との出会いが待っています。

別注アイテムも合わせて、皆様のご来店をスタッフ一同、心よりお待ちしております!

SLOW&STEADY × BONCOURA Presents「ONE-OFF」
詳細はこちら – http://slow-and-steady.com/news/slowsteady-x-boncoura-presents-one-off

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この記事を書いたひと
岡崎 昌弘OKAZAKI MASAHIRO | at_slowandsteady
1981年生まれ SLOW&STEADY 代表。18歳の時より地元の古着屋へ勤務。その後同じく県内のセレクトショップ勤務を経て2013年「SLOW&STEADY」をオープンさせる。ブログとは別で文章形SNS『NOTE』にて洋服にまつわる記事を毎日更新しています。 『NOTE』 https://note.com/slwanstdy
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