S&S / BLOG Nov 17, 2019
Text:OKAZAKI MASAHIRO
Photo:Kenta Kannae
一目惚れしたバッグを作った革職人。改めてghoeとの出会いのエピソードも含めていろいろと書いてみようと思います。
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先日、とあるバッグに出会ってしまった…
対談やイベントでも協力してもらっている仲の良い革職人が店に遊びに来た際、持っていた小型のレザーバッグ。
来た瞬間、挨拶もそこそこに「それ何??」って聞いてしまっていた。
外出時に使える大きさのバッグを持っていないわけではないが、彼が使っていたそのバッグは大きさや収納スペースもフォルムも、無骨さと不器用さ、何もかも僕の理想のバッグに近かった
洋服にあまり関心のない彼。
いつも季節ごとに店に来て「強いやつ」「あったかいやつ」「僕に合うもの」といった具合に洋服を買っていく。
僕はそんな彼が着てくれている洋服が大好きだ。短時間で物凄いエイジングされた洋服は毎回サンプルとして欲しくなるほど。何も考えず毎日仕事で着続けているのを分かりやすく物語っており、見事に職人の洋服に生まれ変わっている。そんな革職人が毎日使いたいと思い、コツコツと試作を重ねて仕上がったそのバッグからは荒々しさと品格を感じた。きっとうちの洋服とぶつけても相性よくまとまってくれるはず。
個人的に自分だけオーダーしたりするのは嫌いだし、それなら店で期間限定で展示しようということになった。

SLOW&STEADY instagramより

コンセプト

FM08は「美しい横顔の小さなショルダーバッグ」という構想から始まりました。この手の鞄は側面に縫い返しがあったり複数のパーツが付いたりと狭い面積に多くの要素が詰まりがちです。それが良い場合もありますが、この鞄は「側面のすっきりとした美しさ」「正面から側面への流れるような膨らみ」を考えて設計しました。あえて裏地をつけないことで身体に沿いやすい鞄を目指しました。

ghoe 田岡

全体的に丸みを帯びたフォルムで、すっきりまとまっているのに何処となく無骨さと荒々しさを感じるのは僕だけでしょうか。全ての工程を手仕事でおこなっているからこその温かみと存在感のある佇まい。

大きさや形はもちろんなのですが、個人的に気に入っているのは鞄の入り口のこのカット。フラップを下げた時のバランス。職人ではないので詳しくは書けませんが収まりがよくとても美しく感じます。

素材

使用しているのはイタリア、トスカーナ地方にある大手タンナーの親族が経営する、より趣向性が高い革を作るタンナーが作ったもの。流行や経済性に流されず革の持つ力を愚直にきちんと引き出している素晴らしいタンナーさんです。
今回お選びいただく革は上質で自然な経年変化が楽しめるショルダー(牛の肩の部分)です。吟面(表面)はきめ細かくナチュラルなシボ感やシワ感があり肉厚でとても柔らかいです。「これぞ革だ!」という直球で私の大好きな革です。

ghoe 田岡

フランクリーダーが扱う鹿革を作る、ドイツの山奥で家族経営しているタンナーとよく似た感じなのでしょうか。拘りすぎて一般的には受け入れてもらえないが素晴らしい革。田岡氏の話からはそんな印象を受けました。

仕様

総手縫い。コバの処理は日本の伝統技法でもある切り目本磨きと呼ばれる手間のかかる方法で処理されています。

市販されている革製品の多くは、ヘリを折り返して縫い合わせている物や、切り目でも、裁断面に色の着いた樹脂のようなものを塗布しているものがほとんどですが、コバをヤスリで何度も磨き上げ仕上げる方法です。切り目本磨きで処理されたものは見た目も美しく、また衝撃やスレにも強いのが特徴です。

ストラップについて

サンプルはついていないですが細かな微調整は必要ないにしろ永く使っていくうえで、洋服や体型に合わせた最低限の調整は必要だと考え、製品には3段階(ストラップの長さを15cmほど)調整を可能にしてもらいます。(写真の真鍮キャストパーツを使用します。)

縫い合わせ仕様で内部に強い芯材を入れているため、使用に伴いストラップが伸びることもほとんどないそうです。

田岡氏との出会い

田岡氏と出会ったのは共通の知り合いがセッティングしてくれた飲みの席。その初対面での非常に印象的なエピソードがあります。(お互いバタバタで随分と行ってないですが2人で飲みに行くと高確率で話題に上がる昔話です)

お互い店を始めたのが同時期なので、今から約6~7年ほど前くらいでしょうか。その当時、田岡氏が作った作品をとあるアパレルショップ(その店が県外であり今はもうないので書きます)が取り扱いをさせて欲しいというのでお店に打ち合わせに行った際の出来事。

田岡氏がいつも仕事で着ていた洋服を見て「職人だからってそんなボロボロの格好だと物も売れないよ。もう少し格好にも気を使った方がいい。作品にも現れているよ。」とオーナーさんから言われたそうです。ちなみにそのオーナーさんは特別革小物に精通しているわけでもない。取り扱いをさせて欲しいと言っておいて…ものを作る人に対してあまりにも無責任な発言です。

そんな経験があったから田岡氏は、アパレル業界にいる人はそんな人の集まりだという誤った認識を持っていたらしく、僕との初対面も喋るまでは少し壁のある雰囲気でした。共通の知り合いからすれば田岡氏の作るものを広めていくためには、その誤解を払拭したいと常々思っていたらしく、それで気の合いそうな僕を呼んだんだと後から聞きました。

その飲み会で田岡氏が着ていたのはビンテージのブルーのショップコートにくたびれたリーバイスのデニムだったと思います。確かに洋服の状態は悪かったけど、その姿を見て僕はそのとあるショップのオーナーさんとまったく逆の感想を抱いていました。

「汚い」「不潔」そんな印象を相手に与えるのは確かによくない。でも汚れを落とすために洗濯をし、着用と洗濯を重ね、色の薄くなったコートとデニム。それに革に使う塗料のようなものがところどころについたその洋服は僕の中では最高にかっこよく見えたんです。冒頭でも書きましたがそれは今も変わっていません。お店で購入してくれた洋服のほとんどが短期間で素晴らしい “職人が着る服” に仕上がっています。

洋服が仕事を語る。ライフスタイルを語る。それこそ洋服本来の姿だと思うんです。これから革の世界で頑張っていこうとしている職人が流行を意識しスマートに全身コーディネイトしている。そのほうがどう考えても不自然な気がしませんか?

そんな風に僕の考えを正直に話したとき、田岡氏は「洋服屋さんはみんな同じだと思っていました。なんかすいません。」と言ってくれました。そこからお互いの悩みなんかを定期的に話する仲になり現在に至ります。

店の在り方についての考察

当店で扱うBUAISOUのアイテムも、ghoeのアイテムも「職人=かっこいい」というわけではなく、そこに情熱と覚悟を持ち、試行錯誤し作っている。そんな力のある物に囲まれていると僕らも元気になれる。同じ徳島だからこそ常にしっかりと話せるし、それをお客さんたちに伝えていける。そこにはブランド力や知名度(今では両者ともに当店とは比べることも恥ずかしいほど有名ですが笑)は関係ない。

良いと思ったもの。店に並べさせて欲しいと心から思えるものを自分のフィルターを信じて厳選する。取り扱いをするのであればお客さんたちに理解してもらえる努力をすること。それが僕ら洋服屋の仕事ではないでしょうか。ましてや売れない責任を全て職人やデザイナーに向けるのは筋違い。そういう人に限って自分は取り扱う商品を使っていなかったり…

以前 「良いものとは」という議題でインスタグラムで皆さんに募集をかけ、全国からそれぞれの素晴らしい意見をいただきましたが、物を販売することは職人さんたち、デザイナーさんたちの声や思いをしっかりと伝え、ブランドも僕ら販売店舗も一緒に成長してしていくことだと思っています。

ブランドの皆さんやお客さんたち。みんなが協力してくれるから僕らも頑張れる。そんな関係を築く場所が実店舗の役割ではないでしょうか。

まとめ

話が脱線してしまいましたが、僕が一目惚れしたこのバッグ。自分はサンプルと同じカラーのnaturalをオーダーしました。実際まだ使っていないから大きなことは言えませんが、来年はこのバッグが僕のお供になることは間違いありません。

革を心から愛し、流行なんか大嫌いな頑固者の革職人が作り上げたこのバッグ。あまり使いたくない言葉ですが、”一生モノ” と呼ぶにふさわしい逸品です。この機会にぜひ!!

岡崎
この記事を書いたひと
岡崎 昌弘OKAZAKI MASAHIRO | sas_okazaki
1981年生まれ SLOW&STEADY 代表。18歳の時より地元の古着屋へ勤務。その後同じく県内のセレクトショップ勤務を経て2013年「SLOW&STEADY」をオープンさせる。
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