
少しまえに私の運営しているPainted BlankよりMelodyというモッズパーカーをリリースしました。店頭の在庫も少なくなってきたので、改めてここで、私が考えているアイテムの魅力について書いてみようかと思います。
Painted Blank 「Melody」商品ページはこちら
https://paintedblank.com/products/melody
リリースまでのお話はメンバーシップにて書いていますのでご確認ください。
「S&S CLUB」
https://rooom.listen.style/p/sands
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フィールドパーカー、いわゆるモッズコートは、もともとアメリカ軍のミリタリーウェアとして生まれました。
M-48、M-51、M-65と受け継がれてきたその系譜は、無骨で実用的でありながら、どこか野暮ったく、それでいてなぜか惹かれてしまう不思議な魅力を持っています。Melodyは、その歴史に最大限の敬意を払いながら、現代の生活に寄り添い、着続けられる一着とは何か、という視点から再構築したものです。
「なぜ、モッズパーカーなのか」
お客様からそのようなご質問をいただくことがあります。
一番の答えは「好きだから」なのですが、それだけでは少し無責任にも感じてしまいます。だからこそ、いまこの文章を読んでくださっているあなたにも、あらためて問いかけてみたいと思います。
数あるミリタリーアイテムの中で、なぜモッズパーカーは、これほどまでに繰り返し作られ続けているのでしょうか。
私は、その理由は単なるカルチャーの継承ではないと考えています。
確かに、1960年代のイギリスのモッズカルチャーと結びついた背景や、M-51 fishtail parkaをはじめとする軍用由来のストーリーは、この洋服に確かな奥行きを与えています。しかし、それだけであれば「過去の名作」として語られるだけで十分なはずです。そもそも当時のモッズたちにとってそれは、ベスパに乗る際にスーツを汚さないための、いわば雨具のような実用品に過ぎませんでしたし。

それでもなお、多くのブランドがこの形に向き合い続けている理由。
それは、この服が「今の生活にも自然に適応できる汎用性」を持っているからではないでしょうか。
風を防ぎ、雨をしのぎ、体温を保つ。
本来は極めて機能的な衣服でありながら、そのシルエットはどこか曖昧で、着る人の解釈に委ねられています。
綺麗にも、無骨にも振ることができる。
つまり、都会的にもなり得る一方で、ファッションとは無縁の環境にも自然と溶け込みます。いわば、どのようにもなり得る振り幅を持ったアイテムだと言えるでしょう。だからこそ、時代ごとに再編集され、作り手ごとに解釈を変えながら、さまざまなブランドでサンプリングされ、いまもなお生き続けているのだと思います。
Painted Blankが今回向き合った「Melody」は、その問いに対するひとつの答えとしてかたちになった一着です。過去に確立された完成形をなぞるのではなく、その本質を見極めたうえで、現代の生活の中に自然と馴染むかたちへと整えていく。ミリタリーという強い背景を持つアイテムだからこそ、足し算ではなく引き算の視点が必要だと考えました。

デザインの軸には、オランダのミリタリーライナーに見られる、袖とボディで素材を切り替えたパネル仕様を採用しました。モッズコート特有の土臭さを程よく抑えながら、全体の印象を上品でどこかスポーティな表情へと書き換えました。素材を分け、大ぶりな袖を配置することで日常着としての距離感をぐっと縮めてくれます。
さらに、ドローコード部分には専用のレザーパーツを取り付けました。ほんの小さなディテールではありますが、全体の印象を引き締め、さりげない高級感を添えています。大雑把アイテな本来の姿はできるだけ残しつつ、見え方だけを丁寧に整えました。
袖をまくることで生まれる柔らかなドレープや、インナーとの組み合わせによって変化するシルエット。そのすべてが日常の中の所作と結びつくことで、肩肘を張らずミリタリーアイテムに苦手意識を持っている人にも、軽装の季節にも、重ね着をする季節にも無理なく寄り添ってくれます。

ボディには、小ロットで手作業により織り上げたフランス産のリネンとアメリカ産のコットンを使ったコットンリネン生地を使用しました。機械的な圧力や張力をかけず、精錬と染色に十分な時間をかけることで、繊維本来の柔らかさと奥行きのある表情を引き出しています。仕上げには特殊乾燥を施し、空気を含んだような自然なふくらみと、穏やかな陰影を与えました。
袖部分には、タテ・ヨコともに30番手単糸を用いた超高密度のコットンウェザー生地を採用しています。前処理ではあえて光沢を出す加工を行わず、綿本来のやわらかさと素朴な風合いを残しました。高密度でありながらコシをほどよく砕いたしなやかな平織りは、動きに合わせて自然に身体へと馴染み、ロールアップ時にもストレスを感じさせません。染色には光沢剤を使用しない反応染めを選び、鮮やかさを抑えた深みのある色調に仕上げています。
このようにして完成したMelodyは、完成された一着でありながら、同時に未完にめけた余白を持たせた一着です。完成を目指すのではなく、使われ続けることを前提とすること。このフィールドパーカーの価値は、時間の中で試され、着る人によって証明されていくものだと考えています。
他のアイテム同様、日々の中で自然と手に取り、気がつけば長く寄り添っている。そんな存在として、この一着をお届けできれば幸いです。
