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2018-03-30 Update

不純物が、藍を藍たらしめている。

まさにその辺がややこしいんですよ。もう僕らでも分かりづらいんですけど。化学藍と天然藍の布、同じ濃度に染めたやつを並べてもほとんど分からないです。ナチュラルもケミカルも化学式は、ほぼ一緒です。藍の染料の化学式ですね。布に染め付くまでの原理も全く同じで、で色もほぼ一緒で、唯一違うのがその色落ち具合。日光堅牢度だとか摩擦とか、経年変化の部分ですね。ただ最初、染めたばっかりの状態だったら見た目の違いはほとんどないですね。

岡崎 不純物が入ってるか、入ってないかみたいなことですか?

そうですね。天然藍には不純物が入ってるんですけど、化学藍は色素100%で不純物が入っていない。僕らがお客さんに言うのは「だんだん藍だけになっていきますよ」って説明をしてます。染めたての時が一番不純物が入ってるんですけど、僕らは染めたその次の日から後処理をしていくんです。お湯通して水洗いして、乾燥させてを繰り返して不純物を落とすんですけど、その時だけで全てが落ちるわけではなくて、一定量は残るんですよ。例えば模様とかで白い部分があると青い部分から白い部分に黄色いのがじわじわって滲んできたりするんです。それが灰汁って言って不純物の一つです。不純物って言ったら響きは良くないかもしれないですけど、不純物が藍を藍たらしめているというか。藍の染料を作ってくれる微生物の働きの結果だったりするんです。そういう不純物が、使い込むごとに抜けていって、藍だけになっていくって考え方で。化学藍の場合はどんどん藍、藍色だけが落ちていくんで、白っぽくなるんですよ。

岡崎 なるほど。徐々に抜けていく不純物も含めて藍なんですね。

そう。藍液のデータとかは毎日取ってるんですけど、サンプルを作ってみないと分からない未知数な部分があるのも化学と天然の違いかも。

岡崎 サンプル作るにしても、本番と同じ工程踏まなきゃ分からないわけですよね。本当に大変…。今回ストールのデザインも持ち込ましていただいたように、いろんな依頼があってOEMされてると思うんです。その中でも「これは大変だった」みたいなのはありますか?

頼まれた仕事ってことですよね?…で言うと、…今回。

一同 爆笑

結城 でも正直、今回まあまあトップだよね(笑)

渡邉 トップだね。

5には入るよね。その分こっちも楽しかったけど。

渡邉 それはある。色々勉強になったし。

岡崎 なんかすいません…(笑)僕は何かを作ってるわけではないんですけど、色々な作り手さんとお会いしてきて、作り手さんの気持ちとかを理解できた分だけ、客さんに伝えやすかったりはあるんです。作られてる方の視点でもそういうことはあるのかなって。

渡邉 出来、不出来じゃないけど、取りかかる熱量は違うんじゃないかな。テンション、モチベーションが違うとは思うし、積極的にしたりはする。

結城 流れ作業にしたくはないっていうのはあります。気持ち無しで、受注、生産、梱包、発送ってなっちゃうと、あまりにも工場的というか。逆に工程が大変なものほど、後処理の後も気になって見てしまうっていうことも。だから今回のストールは大変そうだけどやってやるぞって(笑)

岡崎 ありがとうございます。最終人が作ってる物だし、そういった気持ちも左右しますもんね。僕も気持ちが物に宿るっていうのは信じてお店やってますし。少し話が変わるんですけど、例えば、けん玉とか、だるま糸とか、染めてるじゃないですか。そういう商品のチョイスは誰がやってるんですか?また何か選ぶ基準みたいなものはあるんですか?

結城 チョイスはみんなでですね。

基準は、…いい感じかどうか(笑)

岡崎 けん玉って結構ピンポイントですよね。

けん玉、流行ってたんですよ。アメリカとかではすごいんですよ。ストリートでシャンシャンやってお金もらうみたいな(笑)

渡邉 その頃ニューヨークに行くのが、声かけていただいて決まってた頃で、たまたま、けん玉染めに来た人がいて。向こうで流行ってるから持っていけばって(笑)

そうそう。それで僕らも初めて知ったからじゃあ持ってこうみたいな(笑)

岡崎 そんな感じだったんですね (笑) 結構商品を選んでって感じなのかと思ってました。

もちろん考えて作る場合が多いんですけど、けん玉はそんな感じ(笑)木を染めるっていうのも、色落ちが激しいんですよね。布より全然。それを防ぐためにニス塗ったりするんですけど、それはやりたくないなって。遊んでくうちに色移りするっていうのも面白いんじゃないかってのはありました。けん玉だからカンカン当たって青い傷が入ってくのもいいかなって。単純に青に染めるって感じではなくて、藍ならでは、みたいなのがあるといいですよね。色が変わっていくとか。

岡崎 BUAISOU始めて、染め方・やり方細かく一通り学んでも、未だに分からないところも出てきたりするんですか。そういうときはどうされてるんですか。

渡邉 全然分からない所はありますね。今まで液とかは毎日データ取ったりしてるんですけど、そういうの見たりとか。

今回のケースも全くやったことないし使ったことない道具だったんで、こうじゃね、ああじゃねっていうのが。

渡邉 そういうときにやっぱり全員で考えてって感じでやってきてます。

岡崎 うまくチームとして機能させてるコツとかはあったりするんですか。

うーん、ないから困ってる部分もある(笑)

渡邉 これから作ってこうみたいな感じの話はしたよね

結城 毎朝コーヒーを必ず飲む、これってなかなかないんじゃないですか(笑)

岡崎 ないと思います。じゃあそこでコミュニケーションとってってことですか。

結城 はい。ちょっと前までは、朝飲んで、また5時にも飲んで、昼ご飯もみんなで弁当食べるとかだったんですよ。

岡崎 学校のクラスメイトみたいな感じですね(笑)こうやって何度も来させていただいて個人的に思ったのは、それぞれが藍がやりたくてとか、元々蒅に興味があってとか、そういうので集まってたから、一番大事なところが共有出来てるのかなって。

菌とか天候とか目に見えないものが多いからこそ面白い

渡邉 細かい部分はみんなバラバラだけど、ばらばらだからこそチームとして意味がある気もしてて、さっきのコーヒーの話じゃないけど、そういうおしゃべりでもお互いが新鮮な意見を出せたらなっていうのもあるので。

岡崎 確かにそうですね。それが結果として、BUAISOUの味というか、チームとして唯一無二のものになってますもんね。

渡邉 秘訣こそないですけど、チームになろうと頑張ろう、みたいな(笑)そういう思いはみんな持ってると思います。藍染めって個人技でもできる部分は多いんです。けど、それを個人で済ませちゃうと、会社として意味のあることって、出来なくなっていくし、僕らがチームでやる必要がなくなるから。

結城 最初から仲良い人達で始めたとか、洋服のブランドでもあると思うんです。っていうのと、BUAISOUはまた違いますよね。友達同士だったら毎日時間作ってコーヒー飲もうとかコミュニケーションする時間をとらなきゃいけないんじゃないかって思わないと思うし。

岡崎 渡邉さんがおっしゃったみたいに、それぞれが気を遣いながらそういう時間を大事にしながらやってるからうまくいってるんですね。

結城 先言ってたみたいにしょーもない話とかもすごい大切ですね。もともと辿ってきたルートが違うんで。そこを共有していくのも大事なことで。他人同士だから仕事の部分じゃないことも共有してみたいな。オーダーしてもらう側とウチらっていうのも大事やけど、その前にウチが固まってないとね。

岡崎 甘えちゃいますもんね元々友達だったら。

結城 チームであって、ライバルじゃないですけど。BUAISOUに入って、初めての体験ばっかで。チーム内で意見ぶつけあえて、成長したかなって。何年か前より。

岡崎 それって理想的だと思います。僕の知ってた藍染めの職人さんて、一人で、多くいても二人とかで黙々とやってるイメージなんですけど、こういうチームでって感じは、徳島でも他にないですよね。

渡邉 ないと思います。この人数なので。

岡崎 藍染めだったら藍染めだけとか、っていうイメージが強かったんです。でも染めた物を使って製品作って、で販売して。そこまで一貫してるじゃないですか。今後さっき言ってたみたいに新規参入がちょっと難しいかもっていうことをおっしゃってましたけどBUAISOUさんと同じような業態の藍染めのチームが今後出てくる可能性って考えたことありますか?

渡邉 全然あると思います。続くか続かないかは別として。究極的には、種があって、畑があれば始められるんで。実際何人かで集まって、徳島じゃないですけど、地方でも始めてる人は結構いるみたいです、蒅作り始めて染色して。

岡崎 今は徳島じゃないとこでって言われてましたけど、徳島って藍の産地ってよく言いますよね。それって徳島の気候が蒅に合ってるんですか?

そう言われてはいます。今はそんなに徳島じゃなきゃダメっていうわけではないと思います。けど吉野川の方面の水が綺麗なこととかは影響してると思います。

岡崎 スイスの水が綺麗だから上質なコットンができるみたいな感じですね。

渡邉 まさにそうですね。暖かいし、日照時間の質が良い。

ただ気候も昔に比べて変わってきてるじゃないですか。だから水があって高温多湿で、環境が整ってる場所であれば、基本どこでも作れる。先日もブラジルの人に種を分けて、その方が栽培した様子を写真に送ってくれたんですけど。めちゃくちゃ凄かったです(笑)

渡邉 うん。凄かった(笑)

比にならないくらい葉っぱも大っきくて、シャキーンッ!て育ってて、多分そっちでやった方が効率いいっす(笑)

一同(笑)

暖かければいんですよね、きっと。で、土も多分ブラジルの方が合ってたみたいで。

渡邉 凄かったよな、あれは。

岡崎 じゃあいずれはブラジルにBUAISOUごと引っ越し?(笑)

渡邉(笑)まあ、そういう風に色々出てきてます。たばこみたいに上の方が色素が濃いってデータも出てるんで、岐阜とかは上だけ、天の方の葉っぱだけで集めて、蒅作り始めた若い人がいるって聞きました。

岡崎 そうなんですね。いつも最後に聞いてるんですけど、藍染めの魅力を教えていただければと思います。

渡邉 んー、魅力ですか。やっぱり長く残せる、先に残る物を作れてる、っていう誇りはあります。他にも色が綺麗とか、いろいろありますけど・・・。一言でってのは難しいです(笑)前はさらっと言ってたんすけど(笑)

岡崎 でも残るものだと自分が自信をもって言い切れるって相当な努力があり自信がないと言えないと思うんですよ。毎日藍と向き合って、全工程に人の手が入って、自分らで監修してっていう状況でないと。

渡邉 そうですね、毎日試行錯誤で。だから魅力に感じることも今と昔で変わっちゃったりするんですよね(笑)

岡崎 じゃあ楮さんは??

僕はやってる人少ないからっていうのは結構大きいかもしれないです。やってる人が少ないからこそやりたいって。例えばいっぱいやってる人が増えたらやる気なくなるんですよ。どうせやっていくなら他がやってない、他にはやれないことやっていきたいと思ってたので。自分にとって魅力っていうのは、他にないから、そこが魅力。洋服だとこの服は誰も持ってないぞって感じですかね。

岡崎 それ凄く分かります。グエンさんはいかがですか。藍染めの魅力。

グエン うーん。他の染めに使うのはただのお湯、その後に乾燥させて色が出るのが多いけど、藍だけは、藍を発酵させて蒅を作るから、生きてるって感じがします。緑の葉なのに青になるとか。見えない微生物の力を借りて発酵するのも。毎日のアップダウンもある。今日は藍の元気がないとか藍が疲れてるとか。そんな部分が私のInteresting pointです。

岡崎 ありがとうございます。結城さんは?

結城 そうですね。僕も毎回変わっちゃうけど、土から育てて、染める物の原料を発酵させて作る。それを使って染めるとかっていう“一環”が僕の中での藍染め。僕はそれから入ったというか、染めがやりたかったじゃなくて。さっきの “一環”って要素は藍染めにしかないことで…。発酵とかも、今確かに生きてるけど目に見えないですよね。菌が働いて成り立つとか。結局想像でしかない部分ですけど、やればやるほど、もう一つの宇宙がある、みたいな。つかもうと思ってもつかめないし。やれること、試せることは底無しにあって。すぐ正解が分かったらつまんないし。

結城 あと、化学インディゴを作りたいって言っても何の設備もない状態では作れないですよね。藍染は気合いさえあれば、あと土があれば誰でもできるし。全員一応平等に誰でもできる。環境とかどうしようもない部分は大きいですけど。やっぱり農業だから。でもそれも含めて、みんな平等に努力次第な所が面白いって感じてます。

岡崎 入りは簡単に誰できるかもしれないけど、実際仕事やり始めたら、菌とか天候とか目に見えないものの外的要因が多くてハンドリングがしにくいからこそ面白いってことですよね。

結城 正解!その回答ください(笑)

岡崎 三浦さんはいかがですか。

三浦 …分からないです。

岡崎 なんかそれも期待してました(笑)

三浦 面白い要素はいっぱいあるんです。ただみんな言ってるからねー。確かに面白いんです。うーん、まだ分かんないって感じですかね。これからって感じで、色はすごい好きなんです、うん、色はほんとに好き。くらいっす(笑)

岡崎 小薗さんは?

小薗 …制限があるのがいい。物作るにしても青しかないじゃないですか、藍って。青っていう狭い所で考える面白さっていうのもありますし、染められる物も幅が狭かったり、融通きかなかったり、制限の中に考える余地の深さがあったりするんで。青しか作れない、じゃなくて、その中でどうグラデーションを表現するかとか。染める物、剣玉にしても木の材質だったりとか、加工は無しでいこうとか考えられることは色々あるんですよね。そこかな。

岡崎 皆さんも藍だけで百色作るとかいった取り組みをされてましたもんね。素人目には自由が効かないように思えても、熟練するほどにやれることとか考えることの深さが増していってるって感じですか。

小薗 そうですね、それが一番。もはやどうでもいい、違い分からないし、みたいなことまで考えだす時もあるんですけど、意味があるかないかなんて瞬間では分からないじゃないですか。そういうこと考えてるのが後々、染めの技術とかに繋がれば良いなって。他にも、みんな良いこと言ってくれるなって思ったりはしてたんですけど(笑)

一同 おぉー!

渡邉 絞り出したな(笑)

100点回答!!

岡崎 満点回答が出たようなのでこの辺で(笑)皆さん本当にありがとうございました。

【この対談は2018年2月25日に収録されたものです】【PHOTO: 金苗 健太】

PROFILE

BUAISOU
2012年、渡邉氏と楮氏が活動名 “BUAISOU” としてスタート。2015年、同名で合同会社を設立。阿波藍の産地として知られる徳島県上板町を拠点に、藍の栽培から、染料となる蒅(すくも)造り、染色、製品製作、販売までを一貫して行っている。アメリカやパリ、シンガポールなど世界各国でワークショップや展示などを行い今や世界中から注目されている。
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