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2018-12-26 Update

SLOW&STEADY 5周年イヤーとなった2018年、内外と様々なイベント、コンテンツをお届けしてまいりましたが、その最後を飾る今回は、徳島で洋服を扱うひと、洋服を愛するひとならばその名前を聞いたことがない方はきっといない、
老舗セレクトショップ『Raymond』代表 高橋尚志さんに、満を辞してお越しいただきました。30年に渡って徳島の洋服業界を牽引され、もちろん僕にとっても大先輩にあたる高橋さんに、様々な想いを語っていただきました。

自分が本当に売りたいっていうブランドと出会った。

岡崎 勇気を振り絞って5周年のタイミングで無理矢理お願いしました。めちゃくちゃ緊張してます(笑)高橋さん、今日はよろしくお願いします。

高橋 お願いします。よろしくです。じつはね、この店が出来たことは知らなくてね…でもすごいなぁと、本当に。こんな難しい時代に。ねえ。

岡崎 いや、もう大先輩になるんですけど、レイモンドは何年目になるんですか?

高橋 今で29年目。来年の2月で30年目になるかな。1989年2月からスタートしたので。

岡崎 最初は今の場所とは違う所なんですよね?

高橋 うん、今の店舗と同じ通りにあったんだけど。両方から入ってこれる場所でね、結構気に入って。

岡崎 じゃあそれ以前もやっぱり洋服業界でいらっしゃったんですか?

高橋 一応何年かは働いてました。スーツなんかもやってたよ。メンズだけじゃなくレディースブランドも置いてたような所。洋服屋さんに僕の知り合いが働いてて、そこでよく服を買っててね。で、流れで働くようになったというか。まあ服が好きでそのまま働いたって感じ。そこは何店舗かやってて、僕は最初レディースのお店に配属されてね。初めてだったし、人が流れるファッションビルの中で本当大変だった。

岡崎 それって徳島ですか?
高橋 うん徳島で。昔あった徳島CITYのの中。路面にも系列店は何店舗かあったんだけど、入った当時レディースの店のイメージを変えて新しいことををするってなっててね。ヨーロッパのブランドだとかアメリカのブランドなんかをデニムを中心としてカジュアルショップを始めようって。でね、よく売れた。正直。当時そういう流れもあって、ヨーロッパのジーンズ履いてちょっとカジュアルな感じで、みたいなね(笑)

岡崎 何となくわかりました(笑)

高橋 岡崎君なんかは知らない時代なんだろうけど、本当によく売れたのよ。ピカデリーとかね。そこらが流行ってた頃のああいういう感じ。でもやっぱり何店舗もしてたから全部が上手いようにはいかなくて。で、この店を閉めるってなって。

岡崎 そこから独立されたんですか?

高橋 うん。先のことまでは読めないけれど、言ってもそこそこは売れてたし、お客さんも僕らについてくれたし。その時23歳くらいだったんだけど、これも何かのタイミングなのかなって本当に勢いひとつで店をしたの。頑張って。

岡崎 じゃあ、そのままお店のブランドも持って行って…

高橋 うん、持って行きたかったんだけどね。継続できたブランドもあったんだけど、上手いことは持って行けなかった。「あなたはあそこで働いていた人だから」って会社ごと同じように見る人と、僕個人を見てくれて継続してもいいって言うメーカーもあったりね。
まぁそんなこんなでとりあえずスタートして。新しく入れるブランドもね、今は岡崎くんもそうだと思うけど、ネットなんかで簡単に探せたりするでしょ。昔は探すのもひと苦労で。バッティングとかしゃーないなとか思ってやったけど、あそこがやってるからダメ、じゃあここもできない…みたいな中でようやくハリウッドランチマーケット(以下、HRM)を見つけて。ここはまだ徳島にないなと。当初、こっちではあんまり知られていなくて。中には知ってる人もいたんだけど、東京の大学出たとかそんな感じで向こうに行ってた人じゃないとまだ浸透してなかった時代だったんだよね。で、ネペンテスもできて。本当、一から自分で開拓して探してって感じだった。今の並びになるまでは色々試行錯誤して正直何年もかかったよ(笑)売れないからすぐ辞めるとかじゃなくて、自分が本当に売りたいっていうブランドと出会ったのが、HRMとネペンテス。で、今の形になったんだよね。

岡崎 あー、じゃあ僕は今の形になってからしか知らないですね。

高橋 うん、そうだと思う。みんなが知らないような物を広めるっていうお店をやりたかった。

岡崎 やっぱりそうなんですね。その当時の洋服屋さんて俗に洋服バブルとか言われたりするじゃないですか。やっぱり凄かったですか?

高橋 良い時代だったと思うよ。でもね、そこらの時代が本当に凄かったっていうよりは、DCブランドの時代って言うのがいちばん凄かったと思う。もっと僕らよりも前の世代。僕が10代の頃にデザイナーズブランドとか、メンズビギとかコムデギャルソンとか、ああいう時代が本当のバブルだったんじゃないかなと思うけど。僕たちの世代は、DCブランドがまだある中で、僕のしてたようなのがちょっと出てきたなっていう時代だったのよ。バブル世代ど真ん中じゃないんだよね。

岡崎 僕が初めて行った時と変わらず、いつ行っても洋服がピシッと綺麗に畳まれて、で、変わらず同じ匂いがして。それってレイモンドっていうお店の強烈なイメージとして残るんですよ。それを約30年変わらずブレることなく保ち続けるモチベーションというか、それってやっぱりすごいなって思うんですけど。

高橋 匂いね。最初にお香が好きで炊き始めたんじゃなくてね。HRMに出会った時に東京のお店も行って。HRMって昔からそういう独特の匂いがするお香焚いたりしてるのよ。初めて行った時にその匂いが忘れられなくてね。良い匂いかイヤな匂いかって聞かれたら、ただただインドのお香の強烈な匂いって感じで。昔はグーグルナビもないから、雑誌の切り抜きを片手にHRMを目指して代官山を歩いて地道に探すんだけど、だんだん近づいてくるとあの独特の香りが匂ってきてね、その匂いの先にHRMがあって。お店に入ったら何ともいえないお香の香りがしてるの。で、入った瞬間に気持ちが少し落ち着いて「なにか買いたいなぁ」って気分になったんだよね。そんなのもあって僕もお香を焚き始めたんだけど。やっぱり記憶に残るでしょ、匂いって。岡崎君、本当に大事だよ、お店の香りって。

岡崎 その落ち着く感じ、まさに今のレイモンドですもんね。

高橋 服に染み付け、お店に染みつけ、道路にも染みつけ(笑)お香焚いてたら良い匂いに誘われてってすっと入ってきてくれたりもするんだよね。お腹すいたなってご飯を食べに行くときでも、お店の前でめちゃくちゃいい匂いがしたら「ここってええ店ちゃうかな」って思って入ったりするでしょ。気持ち込めて今も焚き続けてるよ。

岡崎 ディスプレイや畳み方にしても30年同じことをきっちり続けてますよね。

高橋 畳み方かぁ。誰に教えられたわけでもないけど。まあほら、自分なりに考えて。普通だと思うんだけど…。

岡崎 でも僕まだ6年経ってない状態でも、今日もめんどくさいなとか多々あります…

高橋 そんなの全然あるよ。

岡崎 そうなんですか!?ちょっと安心しました(笑)でもそれってなかなか出来ることじゃないっていうか。めんどくさいなって思う中でも同じレベルでモチベーションを保ち続けるってのがまだまだやれていないように思うんです。毎日良い時もあったら、悪い時もあったりで。秘訣みたいなのってあるんですか。

高橋 単純に汚いより綺麗な方がいいからかな(笑)匂いもいい方がいいでしょ。あとね、やっぱり好きだからだとは思うんだけど、洋服が。簡単な『好き』とは違うよ。やり続けて、またそれをやり続けるっていう。好きじゃなかったら商売って長く続けられないと思うのよ。とにかく続けるってひと言かな。やり続けるってことをやり続けてきた。それがたまたま重なってこの30年。

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