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2016-09-13 Update

当店でもオープン当初からお取り扱いさせていただいている革の老舗ブランド『MOTO』そのデザイナーである本池大介さんに快諾いただき、東京の工房にてお話をお伺いすることができました。あまりメディアに露出されない方ということもあり、当店のお客さま含め、一体どんな人が『MOTO』という製品を作っているのか?みなさんとても興味があるところだと思います。リメイク作業中の古着を贅沢にも間近で眺めさせていただきながら「俺これしながら話せるから、始めていいよ」との言葉に、肩肘張らない空気の中スタートした今回の対談。ぜひ最後までご覧ください。

一体自分は何を作るんだろう?ってずっと焦ってた。

岡崎 うちのお客さん達は『MOTO』のデザイナーさんってどんな方なんだろうってすごく興味を持たれてて。今日は本池さんに色々お聞きしたいのですが、いつから革製品に興味を持たれたんですか?

本池 もう、小さい時から。僕の父親が革で製作する人形作家なんで、革っていうものがそこら辺にゴロゴロ転がっててね、そういう環境で育ったから遊び道具みたいになってたかな(笑)小学生の頃にはミシン踏んでたから、今のこの感じとほぼ一緒。(2人爆笑)たとえば小学校で雑巾持って来なさいって言われた事あったでしょ?自分で縫ってたから(笑)

岡崎 そんな環境羨ましい…

本池 みんなはバッグだったり靴だったり革ジャンだったり、人間が身に着けてる物から革に触れるのが最初だったりするでしょ。僕は人形で見て触れたのが最初で。結構それって他の人とは違う所なんだよね。やっぱり後々違う。でね、うちの家はちょっと面白くってね、まあ自転車って小さい時から乗るじゃん。乗るんだけどまず何させられるかって自転車の革のサドルを作らされるの。

岡崎 かなり特殊ですね(笑)

本池 プロレスとかするじゃん。そしたらまたそこでもプロレスのマスク作らされるの。

岡崎 (笑)じゃあ小さい時から「ものづくり」を自然にというか当たり前のようにやっていたって感じですか?

本池 そうそう。野球のグローブだってそうだった。みんなはグローブ買ってもらってプロ野球選手になるんだとかって野球を始めるじゃん。プロレスのあの選手がカッコいいってなって自分もあんなプロレスラーになりたいって思うじゃん。そうじゃなくてうちはね、プロレスしたいって想いがあるならじゃあマスク作ろっかっていう話になる(笑)そうすると色々調べるの。マスクを作るためにどんなレスラーがカッコいいか自分なりに。で、これカッコいいって絵描くじゃん。ってなるともうこれ企画デザインってのを小さい頃からやってたんだよね。今思うと。でも最終はマスクが作りたいわけじゃなくてプロレスがしたいわけじゃん。だからこれが出来たらプロレスができる、するんだ!っていう思いが募るからやっててもすごく楽しいわけ。強制されてたんじゃないからね。

岡崎 「ものづくり」の楽しさや、困難な課題に取り組む情熱とか、それを小さな頃から感じてたんですね。

本池 そう。「ものづくり」はこのままずっとやっていくんだろうなって思ってたよ。自然に。ただ、他の皆みたいに何かに衝撃を受けて、さあ教室だとかから入ってないから、「ものづくり」はこのまましていくけれど、じゃあ一体自分は何を作るんだろう?って所で悩む期間が長かったなあ。自分なりに「ものづくり」をする上での色々な感覚は既に備わっていたんだけどね。
例えば、作る楽しさや手を動かして出来上がってく過程の気持ちよさ、上手くいかなかった時は本当に悔しいけれど、くじけずに何度もやればやるだけ完成に近づいていく達成感とか。小学生の時からその感じはあんまり変わってないかもしれない。上手さも(笑)

岡崎 いやいやそんなことはないと思いますけど(笑)

岡崎 イタリアに滞在されてたってお聞きしたんですが、それはいつ頃ですか?

本池 イタリアではその何を作っていこうかってのを探しに行ったのね。20歳の時に。語学学校が午前中で終わって午後からははフィレンツェにある様々な「ものづくり」をしてる工房を回ってたの。その時はまだ革だとかアクセサリーだとかジャンルも全く絞ってなかったから。だって最初フィレンツェで1件目に尋ねた工房はステッキの工房だったからね。ステッキを手作りでやってる所。当時のフィレンツェってね、普通に街を歩いていたら石造りの窓から靴の木型掘ってる職人がいたりね、トントントントン音が自然に聞こえてくるような街だったの。今は変わっちゃったんだけど。多分そういうのが残ってた最後の年代かな。本当に街歩けば「ものづくり」の街だったから。

岡崎 そんな所がフィレンツェにあったんですね、楽しそう、、何年間くらいそこで?

本池 1年半。最初に帰るタイミングも決めてね。知り合いとか結構長く海外行って帰ってこなくなったりしてたから、これは期限決めなきゃだめだなって(笑)そこだけはちゃんと決めてから行こうって。

岡崎 海外は魅力的ですもん。で、その間にこの先作るものを決めたと。

本池 うん。でも簡単じゃなかったよ。回ってる時もアクセサリーの工房に見学に行ったら、もう帰れ帰れみたいな感じで断られたり、額縁を作ってる工房でもダメーみたいな感じだったり。でも最後はここだって決めてた所へ毎日通った。ジュエリーアクセサリーを一人で作ってる職人のおじいさんの所。僕はね、父親もいるし、その環境ゆえ小さい頃からずっと作ってたから革はわかる。でもバチっていう金具、バッグ作ってもバックルっていうのは既製品を使わなきゃいけないってとこには違和感は持ってて。イタリアでそのジュエリーを見た時に、ああそうだったって気付いたというか違和感を思い出させてくれたっていうか。その人もちょっと変わった作家だったんだよ。あ、これでバックルとか銀で作ったら面白いかもって。そうなったら革をメインでやっぱりしたい。その時に使う金具一つ一つをこの銀の技術でやりたい。自分のやってきた革の技術といい感じで合わさるんじゃないかなって思ったよ。俺がすごい親に感謝してるのは、カルチャーとか流行よりももっと本質的な所で、こんなのできると面白いだろみたいなのを小さい頃から教えてくれたところだね。

岡崎 それも無理矢理作れって環境じゃないですもんね。

本池 うん。プロレスのマスクの話で言えば、出来上がってマスク被ったらどことなく被り心地悪いなーとかいろんな改良点があるわけ。あとやっぱここにゴールドつけたらカッコいいなとか。ネイビーにゴールドとかめっちゃ合うやん。何か風格あって強く見えるなとかあんのよ。赤にゴールドはちょっとチャラいな、何か弱いけど人気選手みたいだなとか(笑)なんかねちっちゃい子なりに分かるというか。本質的な面白さとかカッコよさよか。

岡崎 すごい小学生ですよね。そんな子がそのまま中学生になったらどういう物を作るようになるんですか?

本池 中学はね、自分で作ったバッグ持ってた(笑)みんな流行りの巾着みたいなの持ってたけど俺だけゴリゴリのキャンバスとレザーのコンビのみたいなの作ってさ。でも笑われることなくカッコいい!みたいな感じで、それ俺にも作ってよ。ってファッション好きな奴から言われたりしてね。嬉しかったから今でも覚えてるもん。3点ベルトウェスタンやちょっとペタッとしたロングウォレットとか2000円や3000円で売ってたんだよね。

岡崎 もしかしたらそれが『MOTO』の原点かもしれないですね。

本池 原点だと思うよー。みんな喜ぶしスゲーって言われるし。おっしゃーってなるよね。頭が特別良かった訳でもないしスポーツが抜群にできた訳でもない。けどここで評価されんだって。一芸だよね。

岡崎 本当にずっと「ものづくり」する人なんですね。

本池 だねー。でもそれ故中学からずっと悩んでた。一番の悩みだよ。自分は一体何を作るんだろうって。父親が人形作家だからって人形なんか興味ないじゃん、とりあえず。そこはやっぱり思春期の男の子でさ。自転車のサドル作ったら楽しい、グローブ作ったら楽しい、友達のベルト作ったら喜ばれるとかで色々作ったけれど、とりあえず人形は興味ないじゃん。でもそうすると、何作るんだろう?って。決めねえとなってずっと焦ってた。イタリアでそのジュエリーに出会ってやっと見えてきたんだよね。

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