毎日更新している「僕の洋服物語」からの抜粋記事です。他の記事はホームページに設置したバナーをクリックしていただければ読んでいただけます。
———————————————————————–
中学3年生の頃に同級生の影響で洋服の魅力に取り憑かれ、今に至る(41歳)までに体験した『洋服』をはじめとした『モノ』にまつわるアレコレ。
自分の価値観を形成するうえでターニングポイントとなった『私と”モノ” との記憶』いわばモノにまつわる物語を書き綴る日記。
これは、
『おすすめアイテムの紹介』ではない。
『私物紹介』でもない。
読んだあなたが、少しでも洋服を好きになるきっかけ、自分の使う道具を愛らしく感じてもらえるようになれば嬉しい。
:Episode.85
『klasica SAULT (CS ver.)』
今回は、2022年秋冬に私が購入したアイテムのなかで特に今年買ってよかったと思うものを紹介する。店で取り扱っているklasicaというブランドのウールコートである。
アジアンフォークロア、ガウン、ビンテージハンティングウェアと3つのディテールがミックスされた中綿入りのコート。現在使われている衣類用の中綿の中でも最薄のものを使用しており、表地、裏地、中綿、中綿を挟み込む生地…なんと5重構造で作られている。
表の生地はオーストラリア産のメリノウール100%を使用。そこにコットンの刺繍が施されています。アジアンフォークロア(アジアの民族衣装)のランダムに走るパッチワークパターンがイメージソースにされています。滑らかなドレープが魅力的でシワになりづらい生地である。
私が中綿やダウンなどが使われた高機能アウターをあまり好まないのは、このnoteでも散々書いてきた。理由はスポーティーなイメージが強く、スタイルが単調になってしまうのがどうも苦手だからである。ただ、このコートに使われている中綿は非常に薄く、実際中綿が本当に入っているのかと疑ってしまうほどである。
ヨーロッパのクラシカルなスタイルにうまくアジアンエッセンスが加わることで、つぎはぎだらけのパッチワークコートにも見えてくる。
そして何より驚くほど軽い。ここのところかなりの高頻度で着ているが、どんな洋服にも使える汎用性抜群のシルエットはスーツスタイルでも普段着でも驚くほど使いやすい。
このコートは、決して万人受けするものではないかもしれないが、着てみないとわからない奥深い魅力の詰まった一着である。このコートに初めて袖を通したとき、自分が歳を重ねた10年後も間違いなく快適に着られることは容易に想像できた。
自分が好きなものというのは完成するまで時間がかかるものが多い。何年も使い続けるからこそようやく自分のモノになっていくのだが、圧倒的な素材感を堪能できる代償として我慢しなければいけないこともある。
高機能なのは私の中で重要ではないが、使われる素材やシルエット、地に足のついた独自のデザインなど、全てのバランスを兼ね備えたうえでの軽さや保温力は備えていてくれるに越したことはない。
そんな洋服は意外と少ない。
いわば、現代に蘇ったクラシックカーのようなコートである。