久しぶりにブログを書きます。今回は先日入荷したKLASICAのレザーバッグのご紹介をさせていただきます。(残り一点となっていますが月末にすべてのサイズが再入荷します)
デザインの原型
時代を超えて愛される古き良き時代のアイテムをベースに商品を生み出すクラシカ。このバッグもまた、KLASICAデザイナーの河村さんが所有する数多くのビンテージアイテムから生まれたものです。
デザインは1930~40年代のUS VINTEGE MAIL BAGを再構築したもの。日本でいうところの郵便物の宅配員さんが使っていたものです。シンプルで簡素な作りでありながら未だに多くのメーカーさんがデザインソースに使っている時代を超えて普遍的な魅力の詰まったアイテムです。
手持ちもできるようにつけられたこのショートバンドルはクラシカオリジナルのデザイン。当店のお客様たちもこのハンドルがついているからって購入してくれた方もいるほどこのタイプには珍しく嬉しいデティール。暑いこの時期なんかはカバンが背中に張り付いたりするし手持ちで使えるのは嬉しいですよね。
全体を引き締める真鍮パーツ
バッグに使用されている真鍮パーツが全体の印象をクラシックに引き締めています。メッキ加工を施していない真鍮は使えば使うほど色がくすみ良い表情に変化していきます。
この珍しい船型のバックルは、先ほどの写真でも紹介したビンテージにも使用されているのと同型。正直、使い勝手が良いとはあまり言えませんが雰囲気抜群。現代でもこの形を作り続けている会社があるらしく、デザイナー本人も見た瞬間これしかないと思ったそうです。
使用している革について
使用している革は、1946年創業のイタリアトスカーナテンペスティー社のエルバマットレザーと呼ばれるもの。※審査基準が厳格なイタリア・ベジタブルタンニンレザー組合に加盟しており、長年にわたりヨーロッパのラグジュアリーブランドなどにレザーを提供している老舗のタンナーです。
テンペスティー社は植物タンニンなめしの生誕地と言われるフィレンツェ・サンタクローチェ地区にあります。イタリア・トスカーナに存在する約570社の革メーカーの内、イタリア・ベジタブルタンニンレザー組合に加盟できているのは厳格な基準をクリアした24社のみ。
9世紀初頭からイタリア・トスカーナ地方に伝わる「ヴァケッタ製法」。その伝統を今なお守り続けるテンペスティー社のエルバマット・レザーは、自然の樹木のタンニンでなめし、じっくりとオイルを染み込ませた革です。ヴァケッタレザーは、加脂工程に牛脂を用い、水分を一切使用しないことが最大の特徴で、独特のしなやかさがあります。牛脂は革に浸透しにくく、繊維の奥まで染み込ませるのに時間がかかります。しかし、一度浸透すると抜けにくく、ほぼ永久に潤いと艶のある革質を味わえます。そして、牛脂と魚脂を配合し、より多くのオイルを革に染み込ませるのがTempestiの特許技術、エルバマット製法です。
そんな歴史と技術を兼ね備えたテンペスティーレザー。油分がしっかりと染み込んだキメの細かい牛革はラフな使用にも耐えてくれそうな力強さと品格を兼ね備えています。革製品だけに定期的なメンテナンスは必須ですが5年後、10年後が非常に楽しみ。
未来のために
さらに僕の心を動かしたのはテンペスティー社が環境保護にもしっかり配慮しているということ。家具や紙を製造する為の木材の余剰物から抽出した100%植物由来のなめし剤を使用することで、周辺環境にも優しく金属アレルギーに苦しんでいる人も安心して使用できます。
永く良いものを作り続けるための環境を維持する。それって今まで以上に物作りに関わる人間みんなが真剣に考えていくべきことなのかもしれないですね。
“良いもの” ってどんな物か
ここ最近特に “良いもの” とはどんなものなのか?という問いが頭の中をぐるぐると駆け回っています。『時間を超えて永く一緒に過ごせるもの』というのが開店から今まで、当店の考えを語源化した一つの答えであり現在もそれは変わっていません。でもそれだけでは駄目な気がするんです。
先ほどの話の続きになりますが、ファッション業界が環境に与える悪影響について様々な記事やニュースを目にします。さらには縫製にしろ真鍮などのパーツにしろ腕のいい職人さんたちの減少や工場の閉鎖なんかも大きな問題になっています。ほんの小さなことだけど永く使えることプラスα、何かしら社会貢献というか、堂々と使い続けられる物を紹介したいって思うようになってきました。
作る人がいて生み出す物に共感し販売する僕らがいる。さらにそれを手にしてくれるお客様たちがいる。そのサークルのもうひとつ外側。商品を生み出す上で影響する環境やそれぞれの職人さんたち…そんな物を取り巻く環境にしっかり目を向けるべきなのかもしれないというのが今の僕の考えです。
こういうことを文章で書くと安っぽくなる気がしますが、物にまつわる人みんなが楽しくなれるような物。それこそがこれからの時代にふさわしい “良いもの” の定義のひとつではないでしょうか。
今回ご紹介させていただいたバックもそう。環境に配慮された革を使用し、昔ながらの形を未だに作り続る職人さんがいたからこそ使えるパーツがある。
お客さんにおすすめする際、僕らが口で伝えないと決して伝わらない部分。そんな物の裏側にある物語こそ、今後さらに重視すべきだと思っています。
そんなのを考えれば考えるほど、改めて物売りの奥深さを感じる今日この頃です。