S&S / BLOG Jan 11, 2021
Text:OKAZAKI MASAHIRO
新年あけましておめでとうございます。2021年も変わらぬお付き合いのほど、何卒よろしくお願いいたします。
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早速ですが新年最初の更新は、昨年より秘密裏かつ、ごく個人的に制作を進めていた「とあるバッグ」のご紹介です。

Sophisticated Patchwork Tote Bag (Special)

いくら本物を身に纏っても、手に持つバックがイケてなければ、気分はやはり上がりません。
そこで個人的に常々思っていたのが「しっかり普段使いできる、本物のトートバッグが欲しい」というもの。そこに以前より Carres のお2人からの「SLOW&STEADYならではのパッチワークアイテムを作りたいですね」とのお声掛けが繋がったのが、制作のきっかけとなります。

いまでこそひとつのスタイルとして認知されている「パッチワーク」ですが、そもそもは破れた部分を補強する目的だけのいわゆる「つぎはぎ」。その証拠に、ビンテージアイテムに施されたパッチワークなどを見ると「破れた箇所に別生地を当てて簡易に縫い合わせただけのもの」も多く、しかしそれらはまさに、当時洋服がファッションではなく日常の作業着として使われていた証を、強く感じさせます。

つまりは洋服を深く愛する者にとってパッチワークとは、洋服が持つ本来の機能を改めて思い出させるような、何とも言えない高揚感を抱かせるものなのです。

個人的に僕は昔からそんなパッチワークがたまらなく好きです。
偶発的に生まれる生地の並びが、そのアイテムのもつ物語をさらに際立たせ、深い味わいを増幅させる。それはパッチワークならではの魅力。しかし既製品などで見かけるパッチワークの多くは、正直なところそれ用の布地をただ並べて縫い付けたものも多く、そこには当然物語などありません。

なので個人的にもパッチワークを用いるなら絶対に、『しっかりと物語があって、かつ偶発的な美しさと相反した一流の職人が考え抜いたパッチワーク』これは譲れず、納得のいくアイテムを求めて試作と打ち合わせを重ねて、出来上がったのがこちらです。

見た目はもちろんのこと、耐久性と収容力も抜群!制作には、実に8年間、僕が貯めに貯め続けたSLOW&STEADY の洋服の端切れを用いています。
実際に日常使いしていたところ、思いがけず多くのお客様に「ぜひ商品化して欲しい!」とたくさんの嬉しいお声をいただきました。ですが量も限られた SLOW&STEADY の生地では数個しか作れず、お求めの方全員のもとへ届けることは叶いません。そこで、そこからさらに製品化の可能性に向け、打ち合わせと試作を重ね、ついに完成したのが今回の「Sophisticated Patchwork Tote Bag」となります。

ボディは4種類の中からお客様ご自身に実際に選んでいただく形を採用しました。そこに持ち手と合わせて3箇所にパッチワークを施します。肝心のパッチワークに使用する生地には、デッドストックを含め、SLOW&STEADYとCarresが厳選したもののみを手配いたします。
※製品の特性上、すべて完全1点ものとなりますため、オーダーいただいてから1ヶ月程度制作にお時間を頂戴いたします。

【SLOW&STEADY × Carres】
Sophisticated Patchwork Tote Bag ¥58,300-

SLOW&STEADY × Carres コラボレーション企画の第2弾となる「Sophisticated Patchwork Tote Bag」は岡崎さんとの会話の中で「自分が本当に持ちたいと思う、雰囲気あるパッチワークアイテムが見つからない」という要望がきっかけでした。
そして、岡崎さんが大切に保管してきたSLOW&STEADYの歴史とも言えるハギレを使い、パッチワークの表情を全面に出しつつも、使い勝手の良さを考慮した、マチ付きのトートバッグを制作することになりました。

私達がSLOW&STEADYと仕事をしていく上で強く感じていることに、「流行では無く、時代を超えて愛されていく商品を扱う」ということがあります。気に入ったものを長く持ち続けるために修理は欠かせず、パッチワークという技法は様々な国や地域で古くから用いられてきました。西欧の国々ではアンティークやヴィンテージに特別な付加価値がついて大切に受け継がれていますし、日本にも江戸時代から続く『襤褸(ぼろ):19世紀〜20世紀にかけて東北を中心に農民らが長く着続けるために布を継ぎ足し補強して衣服に新たな命を吹き込む』精神が根付いています。昨今ではSDGsの考え方や過剰なファストファッションに対するカウンターとして、手間隙おしまず作られた質の高いものを手入れして長く持ち続けることが改めて見直されています。

岡崎さんから提供されたハギレは素材として一つ一つが個性的且つ数に限りがある為、それらを最大限に活かせる掛け合わせをパズルピースを合わせるように Trial & Error を重ねて見つけ出すことが制作において肝要でした。そして、色・柄・サイズ・質感の異なるハギレ達をデザインし、細かな手仕事でひとつのアイテムにまとめ上げた完全一点物のトートバッグが出来上がりました。そこから考え方・技術・手法を洗練し、Carresがヨーロッパそして日本で長年かけて集めてきたデッドストックの布や革を掛け合わせ、少量生産ながらも量産性を高めて出来上がったものが今回の ”Sophisticated Patchwork Tote Bag” になります。

Carres

ここにしかないもの

Carresのお2人と制作した第1弾のキャップは、お陰さまで多くの方にご好評いただき、いつしかSLOW&STEADYの帽子 と呼ばれるまでになりましたが、今回のこのパッチワークバッグも、SLOW&STEADY にしか作れない素晴らしいものに仕上がったと自負しています。
お客様との出会いはもちろん、実店舗では、こうした一流の技術を持った方との出会いがあります。そこから思いがけない新たな可能性が広がることが、これまでも数多くありました。

2021年も当店は止むことなく SLOW&STEADY のスタイルを模索し、提案し続けていきます。
SLOW&STEADY にしかないもの、SLOW&STEADYでしか体験できないこと。突き詰めるにはまだまだゴールの見えない長い道のりですが、2021年も懲りずにお付き合いいただければ幸いです。本年も変わらぬお付き合いのほど、何卒よろしくお願いいたします。

※今回ご紹介したカバンと合わせ、第1弾のキャップは近日、オンラインストアでも購入できるよう進めております。情報は追って公開いたしますので、どうぞお楽しみに!

この記事を書いたひと
岡崎 昌弘OKAZAKI MASAHIRO | at_slowandsteady
1981年生まれ SLOW&STEADY 代表。18歳の時より地元の古着屋へ勤務。その後同じく県内のセレクトショップ勤務を経て2013年「SLOW&STEADY」をオープンさせる。ブログとは別で文章形SNS『NOTE』にて洋服にまつわる記事を毎日更新しています。 『NOTE』 https://note.com/slwanstdy
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