書店に行けば「人生を変えた言葉」なんて見出しの本をたまに見かけますが、洋服にも人生を大きく左右するほどの一着があると思っています。
僕で言うとちょうどこの時期になると必ず思い出すとあるコートとの出会い。
そんな話も交えつつ、今回はいつもの商品の紹介から少し離れて僕が思う洋服について少しだけ。きっと独り言のようになりますが、それではあまりに寂しいのでお時間ある方は読んでみてください。

この写真は先日クローゼットの奥から発見したTシャツたち。
その昔、バンドをやってた頃によく着ていたものです。

１０数年前当時中学生だった僕は、大好きだったセックスピストルズやニルヴァーナ、オペレーションアイヴィー、グリーンデイなど、彼らの出ている本を片っ端から眺めネットを使っては調べ、彼らのバンドTや着ている服を買い漁っていました。
最終的には「ネットで気に入った画像をプリントアウトしてTシャツのフロントにガムテープで貼る」という逸脱した行為すら今では懐かしい思い出です。

それから徐々に嗜好が変わりつつも相変わらずバンドTシャツは買っています。今思えばそれが、僕の洋服との出会いだったのかも知れません。

そして現在の職場、SLOW&STEADYと出会って約５年、スタッフとして約２年。
SLOW&STEADYのオープン当初、若干２１歳の僕はあまりにも閉鎖的な佇まいに扉を開けるのを躊躇したことを覚えています。
「ものすごい入りづらい店だな、入ったら２度と出れないのでは…」と大げさでもなく感じて、恐る恐る扉を開けたものです。

今でもこれは初めて来たお客様にはよく言われることなんですが、「しっかり身構えることで気持ちを固める、今後の人生を共にしていく洋服を選ぶのだから、そういう気持ちで入ってきて欲しい」という意味合いを込め、あえてそうしたんだと後で知りました。

こちらは2年前の冬、ほぼ即決で購入した FRANK LEDER のコート。
冒頭で書いた「とあるコートとの出会い」とはこの服のことで、実はこの１着が僕が SLOW&STEADY で勤めることになる決定的なきっかけを作ってくれたものでした。

詳しくは割愛させていただきますが、その日のことは今でも鮮明に覚えていて、「そのコートおっさんになっても着てな」と言って手渡されたこのコートは、僕の人生に転機を与えてくれたもの。絶対に揺るがず胸を張って「これこそ僕のマスターピース」と言えるものになっています。

さらにこちらは古くからの友人（左）。
洋服は自分の原動力にもなりうるものなので、誰しも新しい服を選ぶ時は気持ちも高揚し、いつも以上に楽しい時間になっているはず。
一緒に釣りに行ったり遊びに行ったりと本当に仲良くしてもらってる彼とも、もしかしたら洋服を通じてより仲が深まったのではないかと感じています。

ちなみに彼が着ているのも FRANK LEDER のコート。これは新年のお参りに2人で行く時のユニフォーム（笑）
気合を入れたい日、特別な日なんかには、やはりいつも以上に洋服選びにも力を入れてしまうもので、思い返せばあの日のコーディネートはこうだった、あぁだったとか言いながら、「参観日にはこれを着ていきたい」なんて言ってみたり、「今度の〇〇には何を着ていこう」とか相談に乗ったり。
僕の意見を素直に受け止めながらも、芯では愚直な程に自分の意見を曲げない。そんな彼からはたくさんの刺激をもらい、自分はまだまだ未熟だな、いち販売員としてさらに成長しなければならないなと感じさせてもらえる貴重な時間でもあります。

何より昔からの友人に、こうして当店のセレクトする洋服を選んでもらえることは、素直に嬉しいものです。

洋服は本当に素敵なもので、多くの出会いやきっかけを生み出してくれるものだと強く感じる毎日。
お客さんだった頃から洋服を買い、自分の悩みを相談しては時に怒られ、時に励まされ…。
スタッフとなった今 こう言うと手前味噌になってしまいますが、こういう店こそ、人と人との気持ちが行き交う本当に良い店だと思っています。

と、脈略なく書き綴ってしまいましたが、そんな当店ではいよいよ来月、２月から各ブランド、春夏アイテムの立ち上がりが始まります。
会話こそ出来ない洋服ですが、真摯に向き合えばきっと裏切らず、応えてくれる一着が見つかるはず。

緊張しながら、あるいはドキドキしながら洋服を選ぶ。
そんな気持ちをお客様にも感じ続けててもらえるように、僕も今まで以上に頑張っていこうと思います。