S&S / BLOG Jul 16, 2022
Text:OKAZAKI MASAHIRO
当店の開店当初から支えてくださっている『MOTO』さんとの思い出のエピソードをご紹介します。
442

私は16年ほど前から年間300日以上は革靴を履いている。夏場のサンダルにしろ革のサンダルを履く。

唯一、夜中のコンビニやジムに行く時だけスニーカーを使うのだが、足裏に伝わる履き心地に違和感を覚え、最近はジムの行き帰りだけでも革靴になりつつある。

使い込んで『自分のもの』にした革靴というのは、どんなハイテクスニーカーより心地が良いと感じてしまう。それほど足が革靴仕様になっている。

私がこんなだから、店には基本スニーカーがない笑。自然とお客さんたちもスニーカーを履かなくなる。

これぞ『岡崎流スタイルの伝導術 笑』

とまあ、そんな冗談はさておき、今回は私がほぼ革靴しか履かなくなったきっかけを作った1足を紹介する。

【履いたきっかけ】

この写真の革靴は16年前に、当時勤めていた店のオーナーから誕生日に頂いたものである。

「誕生日、何か欲しいものは?」と聞かれ、鳥取の革職人が作る”moto”のオックスフォードタイプの革靴が欲しいとお願いした。

当時、私は他メーカーのシューズを販売している立場であり、店で取扱いのない、洋服やシューズをオーナーにねだるのはかなりの勇気が必要だった。しかし、オーナーはいつも『靴は大切』だと言っているからダメもとで言ってみると、

「次の展示会(出張)の時に自分で買ってきたら?」とすんなりOKをもらえた。

それからしばらくして、東京出張に行った際に青山にある店舗に自ら行って購入した。

それからというもの私は革靴の虜となる。レザーソール(底が革製のもの)特有のコツコツと響くあの音。特に着用を重ねるごとに履きやすくなるこの革靴は、今まで感じたことのない高揚感を私に与え、同時に『ようやく大人の仲間入りを果たした』そんな気分にもさせてくれた。

このシューズを履き続けたいという理由で革靴のメンテナンスも覚えた。

まさに私の革靴人生を決定づける記念すべきアイテムである。それから5年後、この靴は私に『大きな縁』をもたらすことになる。

【運命を繋ぐ一足】

店で働きながら開業準備に明け暮れていた2012年の夏。私はすでに6年ぐらい履き込んだこのシューズと共に、東京の青山にある『LEATHER & SILVER MOTO』の前に立っていた。

これだけ大好きなシューズメーカーを自分の店で取り扱いができないのは辛かったからだ。

というのも、まず最初に電話でオファーをかけたが「新規のオファーは1年待ち」とあっさり断られてしまった。

当時、海外の革靴より低価格かつハイクオリティーということで、革靴好きから支持を得た人気ブランドとなり、取り扱いの希望が多いこと。ハンドメイドであるため数が確保できないことなどが理由だった。そんななかで新規の店舗になると実績も未知数であり、取り扱いができる可能性は電話の時点で0%だった。

こればかりは仕方がない

とはならないのが私の性格。とことんまで諦めが悪いのだ。

『ダメだからといって伺わないのは失礼』いつものように言い聞かせて、東京に向かう。

【靴が繋げた大きな縁】

緊張しながら店に入ると、モデルさんのような美人な女性が立っていた。

「この人どこかで…」そんなことが一瞬よぎったが、ひとまずは時間を頂いたことにお礼を言い、あとは自分の気持ちを話した。

女性は私の話を聞いたあと、

「覚えてますか?」

と私に聞いてきた。やはりそうだった。私が初めてこのシューズを買いに行ったとき、丁寧にフィッテング(サイズを見てもらうこと)をしてくれた女性が目の前に立っていたのだ。

「徳島から来る岡崎さんと聞いて、まさかそうじゃないかと思っていました。お久しぶりです。あの時、すごく喜んでくれていたのを覚えています。しかも買ってくださった靴を履いてくれているんですね。すごい雰囲気に育ててくれて…ありがとうございます。」

驚くべき縁だった。

私がこの靴を買いに行った頃はまだ、今ほどは、ブランドの知名度も高くなかった。まさに鳥取から拠点を東京に移した直後だったらしく、わざわざ地方から来る人は多くなかったそうだ。確かに、そんな中で徳島から現れた田舎者は印象深かったのかもしれない。「田舎者で良かった」この時ほど強く感じたことはないかもしれない。

さらに女性は、

「私どもとしましては、岡崎さんは新規オファーではありません。以前から応援してくれており、私たちの製品をここまで愛してくれている。そんな人が始める店です。もちろんやらせていただきます。」

そう言ってもらえた。嬉しいのは当たり前だが、それ以上に履いている1足の革靴に感謝が溢れた。

モノが私を助けてくれた数あるエピソードのひとつである。

「もし、電話だけで諦めていたら…」

「もし、この靴を履いて行かなかったら…」

「もし、買っていなかったら…」

そんなことを考えながら帰りの飛行機で足元を眺めていたのを今でもはっきり覚えている。

【現在】

私にとって大きな大きな縁をもたらしてくれたこの革靴は、店の入り口付近にいつも鎮座し、今も店を守ってくれている。底も2回張り替え、何百回とメンテナンスを行っているが、まだまだ現役の一軍。

昔は私の足元を支えてくれていたが、今は店の足元までしっかりと支えてくれている。これからもMOTOは当店にとって大切にしていきたいブランドの一つである。

『過去ブログ』

シーンを選ばず毎日でも履ける『MOTO』”PLANE TOE OXFORD SHOES”をご紹介

この記事を書いたひと
岡崎 昌弘OKAZAKI MASAHIRO | at_slowandsteady
1981年生まれ SLOW&STEADY 代表。18歳の時より地元の古着屋へ勤務。その後同じく県内のセレクトショップ勤務を経て2013年「SLOW&STEADY」をオープンさせる。ブログとは別で文章形SNS『NOTE』にて洋服にまつわる記事を毎日更新しています。 『NOTE』 https://note.com/slwanstdy
SLOW&STEADYONLINE STORE
SHOP NOW
PAGE TOP