S&S / BLOG Sep 6, 2022
Text:OKAZAKI MASAHIRO
前編に続き、今回は先日リリースした久留米織の生地を使用したニューバージョンについて。
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先日紹介した私のディレクションするオリジナルブランド『Painted Blank』の2作目 “Stephan(ステファン)” という名前をつけたシャツだが、生地を変えた別バージョンが9/2日より販売を開始した。

形もボタンも変えていないこのセカンドバージョン。あとで詳しく書くが、とある生地に惚れ込み「この生地であのシャツをもう一度、作ってください」と岡山の縫製工場の社長に伝えた。同じ形はサンプルを制作しないという話も聞くが、性格上、必ずサンプルは制作はする。素材が変わることでフィーリングが違うというのは当たり前。独自のパターン(設計図)を持つこのシャツなら尚更である。

このシャツ(墨染めリネン)に関しては現在も繰り返し着用を続けているが、直すところが見当たらない。生地を変えても “そのまま” それが難しいのは私もよく理解している。「サンプルを見てみないとわからない」いつまで経っても、洋服は現物を見ないと最終的には判断できないのだ。

マテリアルに心奪われたあの日

実は半年前、3作目のアイテム(半纏ジャケット)を制作する際に見つけた、とある生地に私は心を奪われた。福岡県筑後地方の代表的な織物「久留米織」の生地だが、筑後地方の代表的な織物である久留米縞を由来とするこの生地は、複数の糸を使って生み出す伝統的な織り技術と、手作業に宿る温かみが共存する素晴らしい生地。

半纏ジャケット(3作目)を制作にあたり、長年にわたり門外不出だったその生地を使わせてもらえることになった。50種類以上の生地サンプルを見た時は震えるほどの興奮を覚えた。そのサンプルのなかに入っていた「ひきそろえ」と呼ばれる、やや厚手のコットン素材に私は目が止まった。

真っ黒でありながら独自の凹凸(おうとつ)が生み出す趣ある表情は、日本の職人の力強くも繊細な技術を垣間見ることができる。なぜかジャケットよりシャツが頭をよぎり、前回の墨染めを施した素材に負けず劣らずの素材だと思った。シャツ生地として使用するうえで私が求めていたやや厚手でありながら通気性よく加えて、シワになりにくくドライタッチな肌触りは通年の着用に最も適している。

その瞬間、すぐにその黒い生地を確保してもらった。そもそも交渉の末、特別に使わせてくれることになった生地「今しかない」そう思ったからだ。3作目の裏地の前に2作目の再リリースが決まった。というより決まってしまった笑。

遠回り

サンプルが届いた。素材とシルエットの相性は思った以上に抜群だった。が、生地の特性上、想像以上に縮みが強く出るということが判明した。サンプルの着用感としてはワンサイズ以上の縮みがでているようだった。コストはかかるが、今回の生地を使う専用のパターン(設計図)を作り直すことにした。いちから作ることを考えれば大きな壁ではなかったが、つくづく遠回りが好きなようだ。

自分へのご褒美

実はこのアイテムは仕上がりが縫製ラインの関係で「9月中〜末頃になりそう」だと言われていた。ただ「9月4日の自分の誕生日に自分の作った新しい洋服を着たい」という私がボソッとつぶやいた、ただのわがままを縫製工場の職人さん達が叶えてくれた。無理だと思っていたので嬉しいサプライズである。お礼に実家の梨を発送させていただいた笑

販売開始

『ツイードジャケットは100年先で完成する』服飾業界で言われていることわざのようなものだが、私は未来のための洋服を作っているわけではない。自分の人生を共に過ごし晩年まで一緒にいられる洋服を作っている。いわば「終活」である。シンプルで着やすく、やぶれてもほつれても直しが効き、男女、体型にかかわらず「お気に入りの一着」「相棒」だと感じてもらえるようなモノ。

あまりに情報を出せていなかったのでインスタライブを行った。嬉しいことに、「前回買えなかったのでずっと後悔していました。」「待望の待望です!」そんな嬉しいメッセージも多数届いている。

販売開始から数日経ったが、すでに7割は販売している。
いつも遠回りばかりだがそんなブランドだからこそゆっくり伝えられることもあるはず。

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この記事を書いたひと
岡崎 昌弘OKAZAKI MASAHIRO | sas_okazaki
1981年生まれ SLOW&STEADY 代表。18歳の時より地元の古着屋へ勤務。その後同じく県内のセレクトショップ勤務を経て2013年「SLOW&STEADY」をオープンさせる。
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