S&S / BLOG Mar 24, 2016
Text:OKAZAKI MASAHIRO
素材やボタンに至るまで徹底的にこだわり抜かれた、ソフトで着心地が良く普段のスタイリングにも取り入れやすいジャケット。
2,313

IMG_4652

昨年の秋冬でも人気の高かった S.E.H KELLY 『COLLAR LESS JACKET(カラーレスジャケット)』。春夏は重厚感のあるコットンツイル素材でリリースされています。
ワークウェアを連想させる生地を使いながらも、「仕立て服の聖地」と言われる”サヴィルロウ(ロンドン中心部にあるショッピング・ストリート)”でテーラリングを学んだデザイナーだからこそ生み出すことの出来る、細部まで作り込まれた品のある佇まいが魅力のひとつ。
また、素材やボタンに至るまで全てイギリス国内で作られたディテールは、人が袖を通すことで生まれるシワのひとつひとつに至るまで、すべて計算されているのでは とまで思わせる完成度です。
すでに店頭分も残り僅か、そして個人的にもすごく欲しかったこのアイテム。今回、残念ながら僕は買えそうにないのでその悔しい思いも込めてご紹介致します 笑。

非常に着心地がよく、また抜群の耐久性を誇る「ブラッシュドコットンツイル」

IMG_5133

冒頭でもお伝えした、重みのある厚手のコットンツイルは、イギリス北西部”Lancashire(ランカシャー)”地方で丁寧に時間をかけ織られたもの。
見た目とは裏腹に、生地にブラシをかけて仕上げられた「ブラッシュドコットンツイル」は、ソフトで非常に着心地がよく、また抜群の耐久性を誇ります。
着用を重ねれば重ねるほどに体に馴染み、数年後は抜群の風合いに仕上がっているはず。

ひとつひとつ熟練の職人によってハンドメイドされた「ホーンボタン」

IMG_5131

そしてS.E.H KELLYを好きな方が必ずと言っていいほど毎回チェックするのが、この『ホーンボタン』。
機械でボタンの表面を仕上げると独特の光沢が出るのですが、このジャケット含め『S.E.H KELLY』のその他のアイテムに総じてそれが見られず、ボタンの表面がマットなのは、使用されるボタン一つ一つが熟練の職人によるハンドメイドによって仕上げられているからです。

12498996_791902234274842_392448100_n
12721873_791902220941510_980098396_n

そもそもボタン作りは、1860年代のアメリカ南北戦争以来、イギリス中部の”ウエスト・ミッドランド”が発祥とされています。2013年、軍事で使用されるすべての軍用ボタンを製造していたイギリス諸島唯一のホーンボタン工場が衰退により閉鎖。それからすぐその閉鎖した工場の機械や道具、労働者の多くを引き継ぎ、新しい経営者が工場を再建。そして、新たに生まれ変わって動き出した工場初のクライアントが S.E.H KELLY というのも面白い話です。

普段のスタイリングにも取り入れやすい「ボックスシルエット」

12596160_791902230941509_320665483_n

ボディーはあえてシェイプをいれないボックスシルエット。これにより普段のスタイリングにも取り入れやすい一枚となっています。これはS.E.H KELLYが得意とするパターンで、程よくテーパードの効いたパンツとの相性も素晴らしく良いです。
当店のラインアップで言えば、同ブランドのパンツは勿論のこと、BONCOURA(ボンクラ)の『66』、『コールテン』、『オフホワイト』、細身が苦手な方はBONCOURA『XX』あたりを合わせるのがお勧めです。

また、FRANK LEDER(フランクリーダー)のアイテムが、デッドストックの生地やボタンをメインに使い、ヴィンテージのような雰囲気の中にもどこか品を感じるものにする、というアプローチなのに対し、S.E.H KELLYのアイテムは、全て自分たちで糸から作りあげ、英国のフォーマルスタイルにも代表される”もともと品のあるアイテム”を、どこまでタウンユースに落とし込むか、というアプローチで作られています。

このベクトルとしては真逆とも言えるコンセプトでありながら「両ブランドとも好きだ」という方が多いのは、やはりその根底にある「物作りの姿勢」に惹かれるからではないかと思います。
これは当店で扱う他のブランドにも言えることですが、「既製服」というジャンルの中でも、実際着る人のために、真面目に時間やコストを惜しまずに作られた洋服というのは、まるで自分のために作られたんじゃないか、と思うほどに肌なじみが良かったり、着用回数に比例するかのように味わいが増すものです。

このカラーレスジャケットにも代表される、見た目がシンプルで一見何でもないように見えるアイテムにこそ、そういったデザイナーのこだわりや情熱が顕著に現れるのかもしれません。

##
この記事を書いたひと
岡崎 昌弘OKAZAKI MASAHIRO | at_slowandsteady
1981年生まれ SLOW&STEADY 代表。18歳の時より地元の古着屋へ勤務。その後同じく県内のセレクトショップ勤務を経て2013年「SLOW&STEADY」をオープンさせる。ブログとは別で文章形SNS『NOTE』にて洋服にまつわる記事を毎日更新しています。 『NOTE』 https://note.com/slwanstdy
SLOW&STEADYONLINE STORE
SHOP NOW
PAGE TOP