SLOW&STEADY 5th Station 第2弾は、地元、徳島県板野郡上板町を拠点に、藍の栽培から染料となる蒅(すくも)造り、染色、製作までを一貫して行っている BUAISOU さんに依頼をかけて制作したスペシャルストールです。まず最初に無事リリース出来た事が何より安堵感でいっぱいです。共に、度重なる打ち合わせとデザイン修正をかけてくれた、自分の幼馴染でもありイギリスでグラフィックデザイナーとして活躍する村上氏、納得できるまでサンプル作成を繰り返して頂いたBUAISOUの皆さんには本当に感謝の言葉しかありません。 「5周年記念は自分がこれまで生きてきた中で縁のある物を表現したい」 とBUAISOUを訪れてから約一年。今回はこのストールが完成するまでの道のりを <企画編> <制作編> の2部構成で綴ってみようと思います。
SLOW&STEADY × BUAISOU DOT&LINE〈 S&S Progress stall 〉
去年の6月。まだストールのデザインも決まっていない段階で、今回のこの企画を初めてBUAISOUさんへ持ち込みました。自分の店の事やコンセプトなどをまずはお会いして聞いてもらおうと。無我夢中で想いをぶつけているうちに気迫が届いたてくれたのか(笑)、なんと、皆さん快く引き受けてくれる事になり、喜びもつかの間。そこからはタイミングよく一時帰国していた村上氏とのデザインの打ち合わせを納得いくまで一心不乱に重ね、ようやく画が完成。デザインテーマは、前回のルアー同様、「点が線になる」 当店の過去5年間の思い出と、この先もずっと続いていく未来の道のりを願い、表したものです。あまりデザインを強くしすぎると使いづらくなるので、極力シンプルで首元に巻きやすく永く使える当店らしいものを考えました。
藍の刈り取りが真っ最中の8月。仕上がったデザインをBUAISOUに持ち込み本格的に打ち合わせを開始しました。
ストールに使用する生地は、通年使いやすくてウールが苦手な方でも巻ける、独特のシャリ感が魅力的な綿麻生地にしました。デザインの表現はロウを溶かし、職人さんが一つ一つ手書きで防染することによって生まれる古来からの技法、臈纈染(ろうけつぞめ)にしました。仕上がったデザインを職人さんが手書きすることにより現れる独特の表情や、一点一点、線の太さや長さも違うのが大きな特徴です。当然、驚くほど時間もコストもかかりますが 「自分が使いたいものを一度は作ってみない事には、お客さん達に伝わるものも伝わらない。選んできた物をもっと力強く伝えていきたい。」 と、それだけを考えて後の事は後から考えるスタイルで突っ走ることにしました(笑)。
ろうけつ染に使用するのは、「チャンティン」と呼ばれるインドネシアの器具。タイミングよくワークショップでインドネシアに出向いた時に職人さんから譲り受けたもの。(※実作業が始まる前にチームで現地に赴き、実際に作業現場を見てきてくれたそうです。) こんな話を途中段階で聞くと僕自身も気合いが入りますし、良いものが出来るという想像しか膨らみません。
数ヶ月後、サンプルが仕上がったという事で打ち合わせに。正直ここからが難しかった..。 BUAISOUさんが仕上げてくれたサンプルは、僕の出したデザインを忠実に再現してくれていて、しかもその上にろうけつ染の独特の深みがプラスされており、雰囲気は抜群。 ただ僕自身、染物に対しての勉強不足からか、デザインをデータで見るのと現物との表情のギャップもあり、やっぱりやるなら自分の想像よりもっと高い物を目指したいという思いになり、思い切ってデザインも含め再検討することにしました。
普段洋服を作っている方々と接してますが、実際に形にするのは本当に難しい作業なんだと痛感させられました。巻いた時の見え方や線の太さ、空間の使い方などをBUAISOUの皆さんにお手伝いしてもらいながら、気になる部分は奥の奥まで話合いを繰り返しました。
こちらが納得出来るまで幾度となくサンプル制作を繰り返して頂き、とにかく良いものにしようと努力してくれた皆さまの真っ直ぐで温かい人柄には言葉もなく胸を突かれる思いでした。リリース直前になり当時の事を振り返ると、こうやって皆で奮闘した事や、たわいもない話で盛り上がったりした事などの全てが有意義で楽しかった思い出です。
さらに約1年。季節毎にBUAISOUさんへお邪魔し話を聞く事で、地元徳島の”藍染”という伝統をより深く勉強する事が出来ました。それは僕が徳島で洋服屋を続けていく上で非常に貴重で大切な経験になったと思います。
さて、そんな試行錯誤を重ねて、”S&S Progress Stall”はようやく制作段階へ移ります。
明日更新の【制作編】では、実際の作業内容を写真とともに順を追ってご説明したいと思います。