今季、2016SS『FRANK LEDER(フランクリーダー)』のアイテムでもひときわ目を引くシリーズ “BLAUDRUCK(ブラウドゥルック)” 。1920年代の「アールデコ(1910年代から1930年代にかけて西欧で栄えた装飾様式)」パターンの木版を使用した独特の模様が、何ともいえない味わい深い表情を映し出しています。
この染色技法はドイツに古くから伝わるものなのですが、まず模様になる部分をひとつひとつ「ハンドスタンプ」で染めて防止液を塗り押していき、「藍」と同様の植物染料が入った大きな樽に漬け込んだ後に樽から一気にすくい上げる、すると染め防止液が付いていない部分が酸化によって青く染まり、この独特の柄が浮かび上がる、というもの。
また、今回のこの『FRANK LEDER』が製作した”BLAUDRUCK”シリーズを手掛けているのが、自国ドイツでも芸術と評されるこの染色技法を行うことのできる職人、それもドイツで最後の一人になった職人というところに「希少価値」のようなものも感じさせます。
このとても長い時間と手間のかかる、(現代的な側面から見れば)非効率極まりない、昔ながらのプロセスで生まれるアイテムこそ、ドイツの様々な地方にまつわる「伝統」や「衣装」をクローズアップした今回のコレクションになくてはならない重要なピースだと思います。
個人的にも、普段そんなに柄物に魅かれることは少ないんですが、以前のブログでも紹介した『FRANK LEDER』”ボンバージャケット”同様に、僕が心を鷲掴みにされるのは決まって「アイテムから溢れ出る、歴史の重みや職人魂」で、まさにこのアイテムにも、まるで素晴らしい芸術作品を手にしたような喜びを感じました。
今回当店に入荷した”BLAUDRUCK”シリーズは「ベスト」と「キャップ」の2型。
特に着る物によって使い分けができるベストは、シャツやカットソーの上から着ることでコーディネートに「幅」と「厚み」を出してくれる非常に汎用性が高い優れもの。夏場などでもTシャツ一枚でいることが少ない僕は、暑くなる季節、特に重宝しています。
また、生地や柄でバリエーションがあればあるほど嬉しいアイテムなので、ベストを普段よく着る方にもそうでない方にも今回の”BLAUDRUCK”ベストはおすすめの一品です。
最後に余談ですが、大正6年からの3年間、第一次世界大戦時にドイツ兵が収容された場所が、ここ徳島にあります。
そこは人道的な管理方針から、世界でも類を見ない「模範収容所」と評されていたそうです。
その収容所における当時のドイツ兵と、日本兵や地域住民との交流を記念した観光名所「ドイツ館」があり、また「藍染のまち」としても有名なこの徳島で、ドイツの歴史あるアイテムを紹介できるというのも、何かしらの「縁」を感じてしまいます。